オイル交換後のMINI

さて、オイル交換も無事終えたということで、本当に久しぶりに、
作業が終わった翌日の日曜、MINIで出かけてみることにしました。
運転自体があまりにも久しぶりなので、ちゃんとドライブできるかな、
とも思ったのですが、そのあたりは難なくできたようです。

この日はもう雲ひとつない好天でしたので、
とりあえず、滋賀県方面に向かってみることにしました。
当初は、岐阜県の郡上市方面に向かってみようかとも思っていたのですが、
山側に行くと、いまだに融雪剤が撒いてあるかもしれないと思い、断念しました。
滋賀県方面に向かえば、この時期、そんな心配はもうしなくていいかなと思います。
(雪が降る関ヶ原を超えることになりますが、そこまで冷え込みはなさそうですし)

そんなわけで、国道21号線を西に向け走ります。
関ヶ原、醒ヶ井を経て米原へ。
そこから21号線を離れ、琵琶湖の周囲を走る湖岸道路へと入ってみます。
この道は、いつも渋滞しますが、彦根を超えてしまえば、
日曜といえども、極めてスムーズになります。
信号もほとんどありませんし、時折琵琶湖の姿も見えますので、ドライブするには、
絶好のコースかもしれません。

今回はこのまま湖岸道路を南に向かって走り、以前に行ったことがある、
長命寺、という古刹に行ってみることにしました。
このお寺は、小高い山の上にあるのですが、前回、ここを訪れた時は、
山頂に近い駐車場に車を止めてしまいました。
(ちなみにこのときは、嫁のプジョーで行きました)
ですので今回は、山の麓の駐車場にMINIを駐車し、
木々の生い茂る山道を歩いてみようと思っていたのです。

ところが、いざ現地に着くと、駐車場が満杯。
前回ここに来た時には、麓の駐車場にはほとんど車がなかったのに、
今回は異様な混みようです。
テレビか何かで取り上げられたのでしょうか。
そのあたりの事情はよくわからないのですが、一旦駐車場にMINIの鼻先を入れたものの、
駐車場がそもそも狭いので、このままどこかが空くのを待つこともできず、
結局、長命寺行きは中止としました。
ちょっと残念です。

長命寺から湖畔道路へ

そんなわけで、ふたたび湖岸道路に戻り、さらに南下してみました。
気温は、まだ少し肌寒い感じはあったのですが、日差しが強く、
車の中にいれば、まったく寒さを感じませんでした。
いよいよ春がやってきたなと思うと、なんだかうれしくなってしまいますね。

こうしてめんたいパークのあたりまで行き、その後はUターン。
ちなみに、このめんたいパークも、とても混んでいました。
こちらにはまた次回、行ってみたいと思っています。

こうして、いま走ってきた湖岸道路をふたたび北上し、
もう一度、長命寺まで戻り様子を見てみましたが、
やはり駐車場に空きはないようです。
が、今度は引き返さず、そのまま、この細い湖畔の道を直進してみます。

青空と湖面

この道はまさに湖岸の際を通っており、
すぐ左手には、春の陽光を反射してキラキラと輝く湖面が見えます。
海のそばだと、MINIが錆びるんじゃないかと思ってちょっとびびりますが、
湖だとその心配がないので、思いっきり水面を眺めながら走れますね。

2023新春のMINI

その後、適当な湖畔の駐車スペースに寄ったりしつつ、琵琶湖を満喫してきました。

陽光と湖

ふたたび湖岸道路に復帰し、米原方面へと戻ります。
その帰り際にも、彦根近郊の湖岸公園に寄り、青空を満喫してきました。

このあたりは、鳥人間コンテストを開催する場所に近いようです。
それにしても、天気がいいとほんとうに気持ちいいですね。

途中でMINIを駐め休憩

こうしてみると、私のMINIだけぽつねんと駐車しているように見えますが、
実際には、けっこうあちこちに車が止まっていました。
なにしろ、ドライブ日和ですから、誰でも出かけたくなりますよね。

とはいえ、肝心の長命寺には行けなかったので、ことのほか時間が余ってしまいました。
まだ帰るにはちょっと早いかな、ということで、帰路の途中で、
大垣市上石津町の、日本昭和音楽村というところに立ち寄ってみることにしました。

ここはダム湖のそばの公園で、レストランや音楽堂などがあるところです。
ところが、ここも、どういうわけか駐車場が完全に満杯。
もうまったく空きがありません。
どうやらこの日は、音楽イベントがある日だったのかもしれません。
(という割に、あたりはとても静かだったのですが)

この日は、目当ての場所に立ち寄っても、車が止められないという、
ある意味、ツイてない日だったかもしれません。
でも、絶好の晴天の中、MINIでドライブできたのは、ほんとうに気持ちよかったです。

また、お天気に恵まれた日は、気晴らしに、
こうしてどこかに出かけたいなと思っています。


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MINIオイル交換開始

3月も半ばを過ぎると、いよいよ春めいてきた感があります。
そんな爽やかな季節、やはりどこかに出かけたくなってしまいますよね。
そんなわけで、先週、MINIのオイル交換とグリスアップをしました。
コロナ禍や、それにまつわる仕事の落ち込みなど、
ここ数年、なにかと出かけづらい状況にあったのですが、
これからは、MINIでのドライブの機会も、増えるかなと思っています。
(昔のように、1日に500キロも走る、なんてことはないかもしれませんが)

が、今回、まず驚いたのが、オイルの値段です。
いつも使っているバルボリンVRレーシング20w-50の値段が、大幅に上がっていて、
とてもびっくりしました。
なにしろこのオイルは輸入品ですから、円安の煽りをもろに受けるでしょうし、
原材料価格が上がっているので、値上げは予想してしかるべきなのでしょうが、
実際に店頭で価格を見ると、ほんとうにびっくりしてしまいます。

入ってくるお金は実質減っているのに、モノの価格だけが天井知らずで上がっていくわけで、
こんな状況が一体いつまで続くのかと、戦々恐々としてしまいます。
ガソリン代も上がる一方ですし、これからはますます暮らしにくくなりそうです。

エンジンは快調

……と、そんなことをいっていてもしょうがないので、気を取り直して、
さっそく作業を行っていきたいと思います。
まず、最初に行うのは、前輪のタイヤを固定しているボルトを緩めることです。
前輪部分のグリスアップは、タイヤを付けたままでも可能ですが、
グリスの注入具合をしっかりと目で確認するためには、
邪魔になるタイヤを外しておいたほうが好都合です。
作業も、タイヤがないほうが、やりやすいと感じています。
ですので、まず、タイヤのボルトを緩めるところから作業を始めるようにしています。

そして、ドレンボルトを緩めます。
このボルトをあまり締め過ぎてしまうと、外すのに一苦労です。
また、オイルパンはアルミでできていますので、
ドレンボルトの締め過ぎはNGだと、MINI専門店の方から、以前聞いたことがあります。
どの程度の力ならOKで、どこまでがNGなのか、そのあたりは難しいところですが、
このオイル交換という作業を、私はすでに20年以上もやっていますので、
そのあたりは、いままでの経験を踏襲して行なっています。
今回はさほど苦労することなく、ドレンボルトを外すことができました。
(外しにくい時は、少しジャッキアップして、作業することもあります)

廃油パックを用意して

そのあと、これがとっても重要なのですが、
オイルパンを守っているアルミ製アンダーガードと、
オイルパンとの隙間に、丸めた新聞紙を突っ込んでおかなくてはなりません。
(この写真だと、よくわからないんですが、新聞紙、つっこんであります)

この作業を怠ると、古いオイルがアンダーガードの上(内側)に落ちてたまり、
そこから四方から床に滴り落ちることになります。
床を汚すことになりますし、なにかと後々面倒なことになるので、
この作業を、まずはしっかりとやっておく必要があります。

もっとも、この作業をしなくてはいけないのは、
おそらく、うちのMINIだけではないか……、と思います。
というのも、私が以前に乗っていたMINIは、オイル交換のさい、
廃オイルがアンダーガードの内側に落ちるなどということは一切ありませんでした。

いまのこのMINIも、かつて乗っていたMINIも、
どちらもアンダーガードは、後付けのものでした。
ですので、おそらく、それぞれのアンダーガードの位置が、若干ですが、
違っているのだと思われます。
私のMINIのアンダーガードは、きっと、わずかながら、
向かって左側に寄っているのではないかと思われます。

ちょっと話が脱線しましたが、ドレンボルトを外すと、オイル排出口から、
一気に汚れたオイルが出てきます。
といっても、走行距離がかなり少ないので、汚れは幾分少ないようにも思いました。

古いオイルは、最初のうちに、勢いよく抜け出てきますが、
そのあとは、ポタポタと、いつまでたっても、オイルが出てきます。
これをひたすら待っていてもキリがないのですが、
古いオイルは可能な限り出し切ってしまいたいので、
新しいオイルを入れる前に、グリスアップのほうを先に進めていきます。

今回はまず、後輪のラジアスアームから先にグリスアップしました。
ジャッキで軽く車体を浮かせておいて、グリスガンでグリスを注入していきます。
後輪側のグリスアップポイントは二箇所しかないので、作業は楽です。
(もっとも、サイドブレーキのケーブルリンケージ部分に、
指でグリスをねじ込んでおく必要がありますが)

前輪のホイルを外す

そのあと、前輪側をジャッキアップし、タイヤを外してウマを当てたら、
ふたたびグリスガンを用意し、作業開始です。
前輪側のグリスアップポイントは全部で6箇所。しかも入れにくいところもあるので、
注意が必要です。
なによりも、グリスガンの先を、しっかりグリスニップルに当てるのが、
意外と難しかったりします。

グリスニップル

ニップルをしっかり捉えないと、グリスを注入しても、
グリスニップルの手前でグリスが漏れ出てしまうこともありますので、
このあたりは、常に目で確認しつつ、作業を進めなくてはなりません。
これが毎回、けっこうたいへんです。
きっと、MINIをリフトアップしてしまえれば、楽にできるんでしょうけどね。

ブレーキも洗浄

せっかくタイヤを外したので、ブレーキのローター周りを清掃しておきます。
また、ゴムパーツには、ラバープロテクタントを塗布しておきました。
こうした作業は、タイヤを外した折にやっています。

こうして前輪のグリスアップを終えたら、タイヤを元に戻し、ジャッキを下げます。
ドレンボルトを締め、新しいオイルを入れます。
ホイルの固定ボルトも、忘れず締めておきます。

高額になったオイル

バルボリンのオイルの容器は1クォート入りです。これは1リットルより若干少ないです。
これを5本入れると、およそ4.7リットルとなり、MINIにはちょうどいい量になります。
(エレメント交換を行うと、この量では少し足りません)

というわけで、オイル交換完了です。
この翌日、テストドライブにいってみましたが、その模様は、また次回、
ご紹介したいと思います。


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美濃加茂散歩

先週の日曜は、絶好の好天に恵まれました。
こんな気持ちのいい日を思う存分満喫したい、ということで、
美濃加茂市にある『日特スパークテック WKSパーク』という河川公園に出かけみました。
(この公園は、かに木曽川左岸公園とも呼ばれているそうです)
オープンしたのは、昨年2022年の4月だと言いますから、
整備されたばかりの公園といっていいかなと思います。
公園の駐車場にある看板には、NGKのロゴが入っていましたので、
日本特殊陶業が、管理、運営している公園だろうと思われます。

あたりには、遊具広場や遊歩道、サッカー場、グラウンドなどがあり、
休日ということもあって、多くの家族づれやカップル、
サッカー少年などで賑わっていました。
もちろん、無料で入園できます。
遊具もトイレも、まさにピカピカの新品といった状態でした。
それにしても、美濃加茂市には、マザックの機械博物館見学を始め、
過去に何度もきたことがあるのですが、こんな公園があるとは、まったく知りませんでした。

今回、この公園を知るきっかけになったのは、
岐阜トヨタが出版している『VieVie』という小冊子です。

このVieVieという小冊子、トヨタのPR誌という側面が強いのですが、
地元の隠れたドライブコースや、名所旧跡、が掲載されていて、
休日に車で出かける場合は、とても役に立ちます。
月刊で出版されているらしく、すでに80号を超えていると言います。
なにしろ、ドライブ用の冊子でもありますから、地図もついていますし、
オールカラーですからとても見やすいです。

そんなわけでさっそく現地へ。
我が家から、ここ美濃加茂の日特スパークテックWKSパークまでは、
車で1時間と少しでした。

現地到着

とにかくもう、これ以上はないというほどの好天。
空なんて、もう真っ青。
この写真を見る限り、さぞかしお散歩日和だろうと思われるでしょうが、
じつは、とても風が強くて……。
日差しはあっても、もう、とっても寒いです。
しかも、川沿いですから、遮蔽物もなく、風がビュンビュン吹きすさんでいました。

ですが、気を取り直して、ヨメとふたり、ロング散歩に出発します。

幕府軍布陣地

風の強さに閉口しつつも、天気がいいから眺めは最高です。
木曽川の水の色も青々としていて、日差しを受けてキラキラと輝いていました。
あたりには、この風と寒さにもめげず、子供達が遊具で遊んでいました。
さすが子供は風の子ですね……。

承久の乱における戦さ場

そして、承久の乱のさいに起きた『大井戸の戦い』にまつわる案内看板がありました。
看板のあるこちら側が、幕府側 (鎌倉方) の東山道軍が陣を敷いた場所になるようです。
幕府側は、武田信光と小笠原長清と記されています。
また、ここから南西側の前渡という場所では、東海道を西進した北条泰時、三浦義村が、
朝廷軍と対峙したと言います。
(ということは、坂口健太郎と山本耕史ですね)

鎌倉殿の13人では、この大井戸の戦いは大きく取り上げられませんでしたが、
承久の乱のさいに、この地で、幕府方、朝廷方、双方の群勢が激突したと思うと、
なんとも、感慨深い気がします。

川面を見る

地図から察するに、このあたりが、
武田信光と小笠原長清が布陣した場所になるのではないかと思うのですが……。
ただいま重機が入って工事中でしたので、
今後は、公園の一部として、美しく整備されるのかもしれません。

朝廷軍布陣地

で、中濃大橋を渡って対岸側に着くと、朝廷側が布陣したと思われる場所に着きます。
木曽川を防衛ラインとして布陣したという感じなんでしょうね。

ただ、承久の乱についての解説した看板などはなく、観光案内マップを手にしていないと、
そのまま通り過ぎてしまいそうです。

長い遊歩道

そして対岸の堤防の上に設けられた遊歩道を歩きます。
道幅が広く、とても歩きやすいです。
写真ではほとんど人がいないように見えてしまいますが、
実際には、散歩する人、ランニングする人などが、ちらほらといました。
風がもう少し弱かったら、もっと賑わっていたんじゃないかと思います。

謎の人だかり

しばらく歩くと、人だかりのある建物が、堤防のすぐ脇に見えてきました。
なんでしょうか……。
というわけで、そちらに足を向けてみます。

ヤドリギ

なにやら看板が……。
正面に見える一風変わった木に、鳥が止まっているようです。
みなさんは、その鳥を撮るために、ここに集まっているようでした。
みなさん、迷彩塗装が施された、巨大でいかつい望遠レンズを持っています。

皆と一緒にカメラを向けて

で、私もくだんの木にカメラを向けてみましたが、
鳥の姿は……。どうもうまく撮れませんでした。
まあ、望遠レンズ、ないですしね。

この場所は、太田宿中山道会館というそうで、
郷土資料館と、お土産などを販売する売店が併設されています。
というわけで、さっそく資料館に入ってみることにしました。
建物はとても新しいです。
こちらも、日特スパークテック WKSパークと同様、最近整備されたもののようですね。

資料館

こちらが資料館の内部です。昔の街並みが再現されています。
しかも、無料で見学が可能です。
資料館入口には、幕末、天狗党を率いて京に上ろうとした
水戸の武田耕雲斎ゆかりの品があると書かれていましたが、どこにあるのか、
よくわかりませんでした。

ここでの展示は、皇女和宮の行幸についての資料が多かったですね。
和宮ご一行の行列の長いこと長いこと……、
本人は泣く泣く江戸に行ったわけですが、お付きの者は大騒ぎだったのかも……。

さらに遊歩道を行く

そしてさらに遊歩道を進みます。
このコース、かなり長いです。全踏破に1時間40分とありました。
これで普段の運動不足を一気に解消できそうな気がします。

この鉄橋を渡って向こう岸へ

そしてふたたび橋を渡り、日特スパークテックWKSパークに戻ります。
途中、弘法堂に立ち寄りお参り、そして今度はかぐや姫の散歩道をいう小径を通ります。

竹林

竹林の中を貫く道です。なかなか風情がありますね。

夫婦の木

夫婦木という樹木がありましたので、カメラを向けてしまいました。

こうして、出発点の日特スパークテックWKSパークまで戻ってきました。
かなりのロングコースだとは思っていましたが、やっぱりちょっと疲れましたね。
なにより、冷たい風が吹き付けていましたから、けっこう厳しい行軍になりました。

ドライブも楽しいものですが、知らない場所を散歩するのも、
とても楽しかったです。
次回も、どこかに歩きに行って見たいものです。


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天国でまた会おう

コロナ禍、そしてウクライナ侵攻後による急激な燃料費等の高騰もあって、
ここのところ、あまり長距離のお出かけができていません。
本ブログは「お出かけブログ」という傾向がとても強かったのですが、
昨年あたりから、お出かけにまつわる記事がすっかり少なくなってしまって、
自分としても、忸怩たる思いがあります。
さほど遠くなくても、どこかに気晴らしに出かけたいものですね。

というわけで、今回もまた、ブックレビューを行ってみたいと思います。
今回は、ピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」を取り上げてみます。
ルメートルはその女アレックスに代表されるように、ミステリーを書く作家、
というイメージがありますが、この天国でまた会おう、は、ミステリーではなく、
第一次大戦の終戦間際から、終戦一年後までのあいだのフランスを舞台にした、
いわゆる「時代小説」になるのかな、と思います。
しかもこの文庫は、ハヤカワ書房から出版されています。

この「天国でまた会おう」は、続く、「炎の色」へとバトンタッチし、
「我らが痛みの鏡」で、完結となるそうで、
その意味では、三部作ということになるのでしょうか。
で、とりあえず今回は、天国でまた会おう(上下二巻)を、ご紹介したいと思います。

本編の主人公は、アルベール・マイヤールという若者と、
その戦友でずば抜けた画才を持つエドゥアール・ペリクールです。
また、アルベールの上官アンリ・ドルネー・プラデル中尉、エドゥアールの姉、マドレーヌ、
そしてエドゥアールの富裕な父、マルセル・ペリクールを軸に、
物語が展開する構造となっています。

天国で〜の中身

さて、そのお話は……。
物語は1918年秋から始まります。
この頃、第一次大戦はまもなく終わる、という噂が、
戦場のあちこちで囁かれるようになっていました。
そんな状況下では、兵士の士気は上がりません。
もうすぐ終戦なのに、ここで戦死しては元も子もないからです。
こちらのフランス軍も、向こうのドイツ軍も、そんな厭戦気分の中で、
たがいに動きを見せず、ひたすら時が過ぎるのを待っている感がありました。

ところが、敵陣を探るべく斥候に出たフランス兵を、ドイツ兵が射殺。
ここから猛烈な戦闘が始まります。
フランス軍将校のドルーネプラデル中尉は、味方の兵士たちに突撃を命じます。
兵士アルベール・マイヤールもこの突撃に加わりました。
が、マイヤールは、その最中、敵弾に斃れた味方斥候兵の遺体を発見します。
その遺体は背中を撃たれていました。
斥候兵を射殺したのは、ドイツ兵ではなく、味方のフランス兵だったのです。
プラデル中尉は、戦争が続いているうちに武勲をたてようと、
味方斥候兵を手にかけたのです。

この事実に気づいた途端、アルベールは、突進していたプラデル中尉に、
砲弾でできた穴に突き落とされます。この穴からは容易に出られません。
プラデルはその場をさり、その付近に榴弾砲が着弾。
大量の土砂が巻き上げられ、アルベールの落ちた穴は埋まってしまいます。
窒息寸前のアルベールを救ったのは、戦友のエドゥアールでした。
が、直後、さらに砲弾が着弾。エドゥアールは顔の下半分を失う大怪我を負います。

アルベールは、命の恩人であるエドゥアールを献身的に看病します。
が、エドゥアールは、二目と見られない顔になったせいか、家に帰ることを断固拒否します。
アルベールは一計を案じ、死亡したフランス兵と、友人エドゥアールの身分を交換、
エドゥアールを死んだものとし、戦死したラヴィエールの身分をエドゥアールに与えます。

ふたりは、戦後の混乱するフランス社会の中で、肩を寄せ合って生きていきますが、
生活は困窮、もう、どうにもならなくなってしまいます。

そんななか、顔を失ったエドゥアールは、
社会を震撼させある、一大詐欺計画を思いつくのですが……。

ハヤカワ文庫背表紙

物語は、このアルベールとエドゥアールを中心軸としつつ、
いけすかないペテン師プラデルの成功と破滅と、
息子に対して屈折した愛情を持つペリクールの物語、そして
プラデルの妻となったペリクールの娘、マドレーヌのストーリーとを、
交互に、重層的に語るかたちで進展していきます。
なので、ちょっと群像劇的な印象があるという感じでしょうか。

ストーリーは、ルメートルらしくとても面白く、また、
極端なビビリ屋のアルベール、エキセントリックなエドゥアール、のコンビが、
とてもユーモラスに描かれていて、読み手を飽きさせません。
このあたりは、ルメートルらしさが出ているかもしれません。

また、エドゥアールの顔の怪我がいかにひどいのか、その様子や、皮膚の色、
吐息の匂いまで描写してあり、こうしたどこか猟奇的な表現も、
ルメートルらしいのかな、と、ふと思ってしまいました。

余談ですが、顔を失った男が別人になりすます、というくだりを読んだ日本の読者のかたは、
おそらく、100パーセント、横溝正史の「犬神家の一族」を思い出すのではないでしょうか。
私も、読んでいて、思わず、「スケキヨかよ」とつぶやいてしまいました。

互いに深い愛情を抱きつつも、激しく憎み反発しあう、
マルセルとエドゥアールの父子関係についても、読ませどころかと思います。

○ ハヤカワ文庫「天国でまた会おう」の情報はコチラへ ~

ただ、この小説は視点人物がよく変わる構造となっています。
マルセルが視点人物となるシーンなどでは、
ときに、娘のマドレーヌが視点人物なったりします。
それがこの場面の妙味となっているのですが、えてしてこうした多視点人物の小説は、
内容が散漫になってしまうようにも思います。

また、ストーリーにおいても、
アルベールが作品全体の主人公となって物語が進行していく体裁をとりながら、
最後のクライマックスに、そのアルベールが絡まないかたちとなっていて、
これもまた、物語の散漫感を出してしまっているのかな、と思います。

日本の小説の多くは、三人称一視点形式となっていて、
視点人物が変わる場合は、章やチャプターを変えて語る場合が多いのではないかと思います。
このほうがはるかに読みやすいと思うのですが、海外の翻訳小説は、
ひとつのシーンで他視点になってしまうことが、比較的多いように思います。
こういう方法はあまり褒められたものではないような気がするのですが……。

などといろいろ書きましたが、ハヤカワで翻訳出版されるだけあって、
作品としてはとても面白いと思いました。
次作の炎の色は、エドゥアールの姉、マドレーヌが主人公となるようです。
こちらもまた、さっそく読んでみたいと思っています。

あっ、そのまえに、どこかにお出かけに行きたいです!。


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そしてミランダを殺す

年が明け早くも一ヶ月が過ぎようとしています。
光熱費の高騰や食料品の値上げ、連続同等の頻発など、
年始から明るい話がまったくありませんが、本ブログは、今年もマイペースで、
のんびり綴っていきたいと思っています。
というわけで、今回はここ最近多くなりつつある読書ネタをいきたいと思います。
取り上げるのは、創元推理文庫、ピーター・スワンソンの「そしてミランダを殺す」です。
昨年、スワンソンの「アリスが語らないことは」を取り上げてみましたが、
そしてミランダを殺す、は、そのアリスよりも前に書かれた作品です。
本作の出版は2018年だそうですが、スワンソンといえば、
この、そしてミランダを殺す、のほうが、アリス〜よりも有名ではないかと思います。

本作は、アリス~との共通点がとても多くあります。
まず物語の舞台として、アリスにも登場した『ケネウイック』がでてきます。
この街は、アメリカのニューイングランド地方にある小さな海沿いの街です。
(この街は架空で、実在はしないそうです)

アリス~では、このケネウイックの街の様子が、とても詳しく書かれていました。
ちょっとさみしげな雰囲気を持つ海辺の風景、空の色や海の光景、などが、
とてもリアルに、目に浮かぶように書かれています。
海沿いの遊歩道の描写は、とても印象的です。
また、現在と過去が交錯しつつ、物語が展開して行くところも、
アリス~とかなり似通っています。

創元推理文庫

さて、その物語ですが……。
ロンドン、ヒースロー空港のラウンジで、
テッド・セヴァーソンは、若い女性と知り合います。
若くして巨万の富を築いたテッドですが、このとき、心中は穏やかではありませんでした。
というのも、愛する妻ミランダの浮気を知ったからです。

デッドは、酔いも手伝ってか、たまたま知り合った女に、
妻が浮気していることを打ち明けます。
普段なら、他愛もない世間話で終わるところですが、
話を聞いた女は、テッドに深く同情し、浮気妻に復讐してはどうかと持ちかけます。

ふたりはともに同じ飛行機でアメリカへと帰りますが、
女は、テッドに、もしミランダに復讐するのであれば私は全面的に協力する、と、
宣言します。
もっとも、その復讐とは、妻を殺すことであり、完全な犯罪行為です。
が、女は、見知らぬテッドのために、危ない橋を渡るというのです。
女には、完全犯罪を行うだけの頭脳と度胸があるようです。
こうして彼女は、決心が固まったらまた会いましょう、とテッドに告げます。

結局、テッドは、リリーという名のその女と再会し、
妻ミランダを殺害する計画を立てていきます。
やがてテッドは、妻に復讐することよりも、リリーへと強く惹かれていきます。
ところが、予想もしなかった事態に、テッドは遭遇するのです……。

ミランダ〜ページ中身

空港で知り合った女に、妻の浮気を打ち明け、そのあと、
妻殺害の犯罪計画まで練るなんて、ずいぶん乱暴で陳腐な展開、とも思えますが、
そのあたりは、深く傷つき、捨て鉢な気持ちでいるテッドの心情を描写することで、
自然な展開に見せています。
妻への憎しみが募るほど、テッドは、リリーの凜とした姿勢に、
気高さのようなものを感じ、さらに惹かれていくのです。
そういうテッドの心情はよくわかります。

リリーは、細身で知的で美しい女です。
が、どこか心が壊れています。
彼女がどうしてそうなってしまったのかは、リリーが一人称になって語る過去のシーンで、
しだいに明かされていきます。

背表紙

こうして、物語は、テッド、リリー、ミランダ、
そしてキンボールという刑事の独白によって語られていきます。

物語の展開はゆっくりとしていますが、途中、思いもよらない展開があったりと
とても楽しめます。
男性読者であれば、リリーという魅惑的な女性について、あれこれと想像することでしょう。
こんな人に、ラウンジで声をかけられたとしたら……。
テッドでなくとも、もう完全にメロメロですよね。
こうした、謎めいた美女が登場するところが、スワンソン作品の大きな魅力だと思います。

○ そしてミランダを殺す。創元推理文庫の情報はコチラヘ ~

翻訳物の小説は、お値段がちょっと高めなのですが、
読んでみると、やっぱりおもしろいですね。
スワンソンは、ほんのつい最近、だからダスティンは死んだ、という新刊が、
創元推理文庫から発売されました。
こちらもまた、読んでみたいと思っています。
といっても、ケイトが恐れるすべて、を読むほうが先かな……。
そうそう、そういえば、劉慈欣の『三体O 球状閃電』も発売になっていますね。
こちらは、あの三体の前日譚らしいです。

『三体X 観想之空』も出ていますが、こちらは劉慈欣作ではないところが、
ちょっとひっかかって、いまだ読まずにいますが、『三体O』については
もう、ゲットしてしまいました。
(ハードカバーは高いので、以前もらった商品券を使って買いました)

物価高騰で使えるお金が目減りする中でも、
読みたい本はいっぱいあって、本当に困ってしまいますね。
せめて本だけは値上がりしませんように!。


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