
実物の人体標本を展示した「人体の不思議展」という展示会に、
先日の日曜、行ってきました。
この展示会は、公衆の面前に、人間の遺体を展示するため、
人権上、問題があるのではないか、という声も、一部でささやかれているようですが、
メディカルイラストレーションを継続して手掛けている私にとっては、
とても意義のある、貴重な展示会でもありました。
今回、会場に選ばれた場所は、富山市の市民プラザというところでした。
現地についたのは、お昼少し前だったのですが…。
なんと、予想以上の人出。
チケット売り場では、わずかながらではありましたが、行列ができていました。
で、会場に入ると、さらに人だかりが…。
私は、このような展示に、多数の来場者があるとは想定していなかったので、
ちょっと驚いてしまいました。
しかも、小さな子供を連れた家族、カップルなど、客層はバラエティーでした。
(あきらかに、恐いもの見たさ、という感覚で来場している人も、見受けられました)
まず最初に、筋肉が露出した状態の人体標本が、
居並ぶ来場者を、出迎えてくれました。
(残念ながら、場内は撮影禁止だったので、写真はありませんが…)
これら、会場に展示されている標本は、プラストミック標本と呼ばれるもので、
エポキシ樹脂などを使って、遺体に加工を行い、
常温のまま、長期保存できるといいます。
ホルマリン漬けにかわる、画期的な生体標本の保存法だそうです。
とはいえ、さすがに、実際の人体のリアルさは、損なわれていました。
しかも、この標本から、人体の重層的な筋肉構造を読み取ろうとするのは、
いささか、無理があります。
ネッターやヴォルフの人体解剖図のほうが、はるかに、明瞭でわかりやすい…。
つまり、たとえ、どんなにリアルな人体標本があろうとも、
メディカルイラストというものは、やはり、必要なんだなあ、と、改めて実感しまいました。
次いで、人間の筋肉をバラバラにした標本、四肢を切断した標本、
頭部を切開した標本などを見学しましたが、とりたてて、感慨はありませんでした。
(その間も、会場内の来客数は増えるばかり…)
ひとしきりして、少し離れた第二会場に向かうと、
こちらには、人体を数センチ間隔で輪切りに切断した標本がありました。
私は、人体を輪切りにした(横断面)の状態のイラストを、
過去に、数点、手掛けたことがあるため、
この標本には、それまでにない、強い興味を覚えました。
心臓内の肉柱、肺の内部を通る動脈や静脈、腸内のひだ、などなど、
イラストですでに何度も描いていたものが、こうして、現実として、
目の前にあることに、なんだか、いいようのない、不思議な感覚を覚えたのです。
この第二会場の展示物は、どれも興味深く、
時間を忘れて、見入るばかりでした。
それにしても、人間の身体は、じつにうまく作られています。
しかも、すべてが、とてもコンパクトに、ムダなく、納められています。
このようなは人体標本は、ときに、人に嫌悪感を抱かせるかもしれませんが、
神の造形とさえいえる人体の構造の精緻さを知れば、そんな感情は吹き飛んでしまい、
ただただ、驚嘆を覚えるばかりです。
こうして、じっくり、各標本を心ゆくまで観察してきました。

そして、そのあとは、ふらりと海にいってみたりして。
なんだか、気持も切り替わりますネ。