血圧計

じつは私は、ここ一年半ほど、血圧が高いことに悩んでおり、
起床後と就寝前、毎日かかさず、数値を測定しています。

いままで他人事だと思っていた、この「高血圧」という事実が判明したのは、
一昨年の11月のことです。
このとき、私は、地元の日赤病院で眼の検査を受けたのですが、
そこでたまたま血圧を測ってもらったところ、上が180で下が140という、
驚くほど高い値が出てしまったのです。
それからというものは、ずっと血圧を気にかける日々を過ごしています。
(ただ、おかげさまで、眼については、異常はありませんでした)

というわけで、早々に血圧計を購入し、日々の記録を取ることにしたのですが、
安易に降圧剤に頼りたくないということで、医師の指導や、血圧を抑制する本などを読み、
減塩を心掛けるなどしたところ、こうした、極端に高い値が出ることはなくなり、
上が130の後半から140の前半で推移する、という、状態を維持してきました。
(どうやら私は、病院などの医療機関で血圧を測ると、いつもより、
 はるかに高い数値が出るようです)

ところが先日、血圧計をテーブルから落としてしまい、それからは、
160を越えるような高い値が出るようになってしまいました。
さては落下の衝撃で血圧計がおかしくなったか、と思い、
メーカーに修理を依頼したのですが、調べてもらったところ、
血圧計に故障はなかったとのことで、結局、実際に血圧が上がっていた、
ということがわかりました。

ここ最近は、国立循環器研究所の「かるしおレシビ」という本に載っている、
減塩されたメニューを、ヨメさんに作ってもらったりして、
より減塩を心掛けていたのですが、それでも、どういうわけか、
血圧の上昇を招いてしまったようです。

たしかに、日によって、血圧は変動するもので、
何かの拍子に、150前後までいってしまうこともありました。
いそがしいときのストレスが原因なのかもしれません。
ただ、こうした高い数値は一時的なもので、また、130後半から140前半、
という状態に戻ったのですが、ここからさらに下がることはなく、
減塩にも限界が見えてきました。
これ以上、減塩するのなら、いっそのこと、食事を一食抜いて、
一日2食とかにしたほうが、いいんじゃないかと思うほどでした。

そんな折に知ったのが「プチ断食」です。
このプチ断食というのは、もともとは、
ダイエットやメタボ解消のための健康法ということで、
痩せ形の私には、まったく縁のなさそうなものに思えていました。
しかし、いろいろ調べてみると、断食には血圧を下げる効果もあるということで、
今週月曜から、意を決して挑戦してみることにしました。

プチ断食、というだけあって、その行程は三日間です。
一日目の夕食から食事を減らし、二日目は水以外何も口にせず、
三日目は、消化のよいものを少しずつ取っていく、という方法です。
具体的なやりかたについては、こちらのサイトを、主に参考にしました。

● プチ断食のすすめ! / All about

以下は私が実践してみた「プチ断食」のレポートです。
血圧が高い方は、ぜひ、参考にしてみてください。

まず、第一日目 (24日/月曜)
朝食をヨーグルトと紅茶のみにし、昼食(パスタでした)の量を少なめに、
夕食は納豆1カップと牛乳のみにしました。
この日の朝の血圧は、141/89 脈拍66です。
食事を減らしていった夜の血圧は、140/87 脈拍65です。
(血圧の数値は、それぞれ二分おきに三回計測して、真ん中の値を取っています)
まだ、ほとんど変化はないといっていいくらいです。
夕食の食事量を減らしても、さほどつらいという意識はなかったのですが、
やはり、寝る頃になると空腹感に苛まれました。
ですが、夜はよく眠れたと思います。

そして、第二日目 (25日/火曜)
この日は、水以外はなにも口にしない日で、プチ断食の、
いわばメインとなる山場です。
さすがにこの二日目はかなりキツかったです。
空腹感もさることながら、とにかく、身体を動かすのがおっくうになり、
トイレに行くのも面倒になりました。
とはいえ、断食中は、頻繁に水分をとらなければならないため、
トイレの回数はふだんよりずっと多くなり、
それがよけいに気分を滅入らせました。
胃酸が込み上げてくる感覚もあり、気持ち悪くなることもありました。

また、記憶力、判断力、思考力、ともに著しく低下します。
仕事が忙しい時には、絶対にできないと思いました。
それでもこの日は、遠方の銀行まで徒歩で行ったりと、
適度な運動もしてみました。
(もし、この状態でクルマを運転したりしたら、危険だったかと思います)

しかし、この日から、血圧には変化が表れ始めました。
この日の朝の血圧は、131/85 脈拍68でした。
午後二時の計測では、132/89 脈拍77でした。
これらの数値は、前日とさして変化はないのですが、
夜になると、125/74 脈拍83となりました。
一時的なものかもしれませんが、プチ断食には、たしかに、
血圧を下げる効果があるように思えてきました。

ただ、この夜は眠れず、トイレにも何度も起き、たいへんつらいものでした。

おかゆ

そして最終日の三日目 (26日/水曜)
この日は、回復食として、おかゆとヨーグルトの朝食をとることにしました。
量は控えめにして、とにかく、よく咬んでゆっくり食べるようにしました。
食事をとることで、前日はあれほどぐったりしていたのに、
だんだん元気が戻ってくるような気持ちになりました。

この日の朝の血圧は、126/72 脈拍85となりました。
ふだんは120台にはなかなかならないので、プチ断食は、間違いなく
血圧抑制に効果があるといえると思います。

グラノーラ

昼食も控えめな量のおかゆにし、
それに加え、納豆とグラノーラもいただきました。
この日の午後二時の血圧は118/72 脈拍80となりました。
こんな数字は、血圧をはかりはじめて、初のことだと思います。
ただ、脈拍が速くなっているのが、気になるところですが…。

夕食も、ひきつづき、量を控えめにしたものの、いたって普通に取りました。
この日の夜の血圧は、122/81 脈拍68です。
下の値がまだ少し高いかもしれませんが、
ふだんより下がもともと高めの私にとっては、
これなら充分な適正値だと思います。

翌日 (27日/木曜)は、もうプチ断食の日程を終えたのですが、
一応この日も、食事には気をつけました。
朝はあいかわらずのおかゆとヨーグルトし、量も控えめに。
朝の血圧は119/83 脈拍74でした。
昼食もおかゆにして、今度は納豆なども食べました。
午後二時計測の血圧は122/80 脈拍77でした。
夜の血圧は、129/76 脈拍62でした。
血圧は低い数値を維持したまま、脈拍は通常の状態に戻ってきました。

その翌日である今日(28日/金曜)の、
朝の血圧は、125/80 脈拍67
午後二時の血圧は、121/78 脈拍72でした。
プチ断食が終わっても、血圧は安定して適正値にあります。

さらに断食の期間を長くすれば、さらなる効果が期待できるのかもしれませんが、
素人判断でできるのは、このあたりだと思います。
(これ以上の断食は専門家の管理下に入る必要があるかと思います)

とにかく、血圧を下げる、という目的は達することができました。
あとは、この状態を維持したいわけですが、そのためには、
減塩とは別に、ある程度、食事に制限を設けることが、必要なのかもしれません。

今後も、クスリに頼らない血圧の適正維持を、心掛けたいと思っています。





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ジェノサイド上下巻

今年は、比較的、雪の少ない冬だと思っていたのですが、
二月に入ってから、連続して『週末の大雪』に見舞われ、
こんな天候では、もはやどこかに出掛けるという気にもなれず、
結局、家でおとなしくしていることしかできませんでした。
そんなわけで、ここ最近は、日曜であっても、
雪掻きをしたり、やり残した仕事をしたりという、
つまらない過ごし方をするばかりとなってしまっています。
まだまだ春は先なのですが、早く雪が溶けてなくなってくれないかと、
かなわぬことを願うばかりです。

そんなわけで、今回は、当ブログには珍しく、前回に引き続き、
ブックレビューネタを書いてみたいと思います。
今回は、高野和明氏の小説『ジェノサイド』です。

私は、書店の店頭に平積みされていた、
この作品のハードカバー版を見たときから、
とても強く心惹かれていたのですが、なにしろハードカバーはお値段も張りますし、
場所もとるので、いつか文庫になったら、読んでみよう、などと、
思っていたのです。

そうこうするうちに、昨年末、書店の文庫コーナーに本書を見つけ、
思いのほか早く文庫になってくれたなあと、心密かにほくそ笑みがら、
レジへと向かいました。
とはいえ、前回レビューした『永遠のゼロ』と同様、
このジェノサイドも、日々のいそがしさもあって、
しばらくは自室の棚に「積んどく」状態となっていたのですが、
今月、ようやく読了することができました。

本書は、難病の息子を抱えるアメリカ人の傭兵と、
父を亡くした若い薬学研究者という、
まったく接点を持たないふたりの主人公を、交互に登場させながら、
なおかつ、アメリカの政権中枢部からの視点や描写も差し挟みつつ、
ストーリーが展開していく、という構成になっています。
そして、このみっつの場面の繋がりが見えてきた時、
人類の行く末を左右する重大な事柄が浮かび上がってくるのです。

ジェノサイド/文面

この物語は、ミステリーというにはSFに近く、
ともすれば、B級ハリウッド映画になってしまいそうな感もあるのですが、
圧倒的なまでの化学知識、軍事、政治知識などが、綿密に散りばめられていて、
まさに国際情報小説とでも呼べるような読み物となっています。
しかも、そのストーリーは緻密で、テンポもよく、伏線の張り方も見事で、
それでいて無理な筋立てがありません。
冒頭のプロローグから、一気に読み手を引き込んでいきます。
ほんとうにおもしろい。
読み進めるなか、エンターテインメント小説というのは、こういうものだ、と、
膝を打ちたくなる思いになりました。
上下二巻のかなりの長編ですが、中だるみや緊張感のとぎれはまったくなく、
謎解きや派手なアクションも織り交ぜつつ、
最後まで、ノンストップの勢いで読ませてしまいます。

登場人物の描写もすぐれていて、それぞれの外見、内面も、
過不足なく表現されており、あらゆる場面において、
情景が脳裏にくっきりと浮かんできます。
さすが「このミス」第一位を獲得するだけのことはあります。

本書を読んでいて、私の意識のなかで強く想起されたのが、
アーサー・C・クラークのSF小説『幼年期の終わり』です。
このジェノサイドという物語が練り上げられる段階で、
幼年期の終わりが、着想のさいのひとつのヒントになったのではないかと、
私は、勝手ながら強く推察しています。

幼年期の終わり

ある日、地球の主要な大都市の上空に、突然、巨大な宇宙船が飛来します。
その宇宙船を操る地球外知的生命体『オーバーロード』は、
最初こそ人類をパニックに陥れますが、世界はやがて、オーバーロードによって、
繁栄と幸福の時代へと導かれていきます。
その後、オーバーロードによって触発されたごく一部の人類は、
進化の次のステップへと移行することとなります。
オーバーロードの真の目的は、この人類進化の促進だったのです。
新しく誕生した人類は、しかし古い人類との共存は許されませんでした。
旧人類は、新しい人類を見届けた後に、淘汰される運命を辿るのです。
幼年期の終わり、とは、たしか、このようなストーリーだったと記憶しています。

クラークのこの作品は、ヒトのさらなる進化を描いたものでしたが、
ジェノサイドも、別のアプローチで、
同じテーマを描いているのではと思います。
『人間以上の存在』というのは、時代や洋の東西を問わず、
イマジネーションの源泉となっているものかもしれません。

また、本書では、作者自身の思想とでもいうべきものも、顔をのぞかせています。
ジェノサイドという題名を地でいくような、ときに残酷に過ぎると思える描写も、
そこまで書くか、と思うほどに書き込まれています。
地球の裏側で行われている非道の行為を、まざまざと描くことで、
繁栄と平和を享受している私たちが、同じ地球で繰り広げられている暴力に、
見て見ぬ振りを決め込んでいるということを、突きつけているかのように、
思います。

余談ですが、本書の中に登場する、
肺胞上皮細胞硬化症という難病も、ハイズマンレポートという存在も、
あとがきによると、架空のものだそうです。
双方とも、とても綿密に描写されているので、私はてっきり、
実際に存在するものと思っていました。
とくに、肺胞上皮細胞硬化症については、
発祥のメカニズムまできめ細かく説明してあり、架空のものだと推測することすら、
まったくありませんでした。

とにもかくにも、ほんとうに面白い小説です。
室内にこもることが多い冬には、こうした手に汗握る物語を楽しむのも、
一興かと思います。




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