How to Draw

この8月は、それまでの忙しさがウソのように、
よくも悪くも、時間に余裕のある状態になってしまいました。
というわけで、この機に乗じて、先日、当ブログでも紹介した、
透視図スケッチの指南本である『スコット・ロバートソンのHow to Draw』を、
読み進めてみました。
もちろん、ただ読むだけではなく、実際に手を動かしてレッスンもしてみました。

すばらしい内容を持つこの本も、ただ積んでおくだけでは、何の意味もありません。
このような、時間があるときに、少しでも練習を積み、
新たなスキルを身につけなければなりません。

仕事に追われていると、単に目の前の事象を片付けることだけに、
時間とエネルギーを使うばかりで、
いわば『放電』状態が繰り返されるだけになってしまいます。
ですので、いうまでもないことですが、ときには、なにかを学び取る、
充電の時間も必要ではないかと思っています。

● 本書の最初の紹介記事はコチラです

さて、では本題に入りたいと思います。
スコット・ロバートソンのHow to Drawの冒頭には、
まず、必要な画材を揃えるよう書いてあります。
ですが、なかには、楕円定規セットや等間隔デバイダーなどの、
非常に特殊で高価なものもあり、なかなか、おいそれと手が出せません。
もっとも、上記の道具が、本書を使ってのレッスンにおいて、
どうしても必要かというと、一概にそうともいえません。

ですので、記載された道具をすべて揃えなくとも、
本書のレッスンを始めることはできます。
私の場合、とりあえず、学生時代に買った楕円定規などで、
事を進めていくことにしました。

道具たち

こちらが、私が当面の作業のために用意した道具です。
コピックは今回新たに買い求めましたが、ほかにものは、すべて、
以前から我が家にあったものです。
最初のうちは、これだけあれば充分かと思います。

ちなみに、写真に映っている楕円定規が汚いのは、
その昔、エアブラシイラストを描いていたとき、
この楕円定規を、リキテックスを吹き付けるさいのマスキングに使っていたためです。
私にとって、楕円定規は、かつては、楕円をかくものではなく、
マスキング用素材として多用していました。

ちょっと話が脱線してしまいましたが、
道具の紹介のあとは、フリーハンドで直線や楕円を描くレッスンの章になります。
このレッスンは創造的なものではないため、ちょっと退屈なのですが、
一応、ひととおり、練習してみました。

その次の第2章は、透視図の基本となる、遠近法の詳細を記す章になります。
ここでは、一点透視、二点透視、三点透視、五点透視のメカニズムを、
さまざまな図を交えて、くわしく、わかりやすく解説してあります。

もっとも、この章を読むと、
スケッチのさいには、いつもキッチリと、はるか彼方にある消失点を割り出し、
そこから、長い長い補助線を引っ張らなくてはならないのか…、
とも思ってしまいます。

ですが、そのような方法が推奨されているわけではありません。
この章における、透視図のメカニズムの紹介記事は、
あくまで、基本となる『概念』を知るということで、
後の章に登場する実際のスケッチでは、
あらかじめ作成した正確な透視図グリッドを用意し、
それを下敷きにすることで、正しいパースによるスケッチを起こす、
という方法が紹介されています。

ただ、透視図による『モノが見えるメカニズム』が、
頭に入っているのと、頭に入っていないのでは、大きな違いがあり、
決して、おそろかにできない部分でもあります。

また、実際には三点透視になりそうな場合でも、
二点透視にて描かれている事例も多いです。

スケッチ3

たとえばこちらは、さらに後の8章に登場する、紙飛行機のスケッチです。
このアングルは、紙飛行機を見下ろしており、
ともすれば、三点透視になるのではないかと、
そんな状況にも見えます。
ですが、垂直線グリッドは、収束しない平行線として(二点透視として)、描かれています。

二点透視になるのであれば、対象物とカメラ(視点)とは、水平にならなければならず、
対象物を少し見下ろしているこの図では、実際には、
垂直線にもわずかながらパースがつく状態になるのが、本来の姿のように思います。

ただ、現状の二点透視であっても、
紙飛行機は、じゅうぶん自然に、そして正確に見えます。

つまり、こうしたスケッチの場合、
わざわざ複雑な三点透視にしなくても、
二点透視で、じゅうぶんパースの整ったものにみえるわけです。
飛行機のデザインプランを示すスケッチであれば、これで充分ですし、
それでいて、立体としての正確性はしっかり備わっています。

第2章で解説されている透視図のメカニズムは、
とても重要な知識ですが、それにガチガチにとらわれることもないように思います。
要は、見る側に、何の違和感もなく、すっきりと、
立体物のデザインを提示できればいいのですから…。

遠近法の解説の次の第3章では、
透視のついた状態での、正方形の分割、鏡面反転、などが解説されています。
これも、とても重要な描画法でありながらも、難しいところはなく、
私にとっては、目からウロコでした。
なるほど、この方法を使えば、架空の飛行機やクルマ、宇宙船などのメカニックを、
パースがついた状態で、正確なシンメトリー状態に描くことができます。

スケッチ2

こうして、レッスンを進めていくと、しかし次第に難易度は上がってきます。
私がとくに苦労したのは、補助線の数が多くなると、
正しい補助線がどれなのかわからなくなり、
別の補助線と勘違いしてしまうところです。

スケッチ1

また、スコット・ロバートソンは、ボールペンでのスケッチを推奨していますが、
私には、これがうまくいきません。
インク溜まりのおきやすいボールペンは、私の苦手な筆記具であり、
かといって、描きやすい水性ボールペンを使えば、線の濃淡がつけづらいです。
よって、私は、すべてシャープペンシルを使ってレッスンしています。
このあたりは、好きな筆記具や画材を使えばいいのではないかと思います。
ただ、スコット・ロバートソンのいうように、
一度描いた線は消さない、という掟は、守っています。

こうして、いま、8章まで終えたところですが、
まだ先は長く、今の段階では、新たなスキルが身についたとは、
とてもいえない状態です。
しかし学んだことは多く、こうした知識は、今後も、役に立つと考えています。

ここのところ、デジタル技法ばかりにとらわれている私ですが、
こうした、手描きのレッスンは新鮮でもあり、また、
機器やソフトにたよらない技術は、大げさな言い方をすれば、
一生の宝になるものかもしれません。

今後もまた、この本について、また、同様の書籍などの詳しい紹介を、
当ブログで行っていきたいと思います。

洋書の翻訳本は、安価なものではないため、
購入をためらう方もいらっしゃるかと思いますが、
そうした方のために、できるだけ詳細なレポートをお届けできればと思っています。




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ジオラマ作品

先週末、安城市の安城歴史博物館で開かれているジオラマの企画展、
「昭和ミニチュア情景展」に行ってきました。
そもそも、この企画展の存在を知ったのは、
ジオラマを出品している作家さんのブログだったのですが、その後も、
テレビのローカルニュース番組などで取り上げられたりするなど、
さまざまな場面でこの展示のことを知ることとなり、
そんなこともあってか、日を追うごとに、
どうしても、ジオラマ作品を見てみたくなってしまいました。
というわけで、なんとか、この八月のうちに、
行ってみたいと思っていたのです。

おりしも、先週末には時間ができ、絶好の機会だということで、
ヨメのクルマで安城市までいってみました。
(エアコンのないMINIでは、夏場はちょっときついのでは、
 ということで、ヨメ車出動となりました)

安城市歴史博物館

こちらが、会場となっている安城市歴史博物館です。
とても大きくて立派な施設で、驚きました。

● 安城市歴史博物館のサイトはコチラ

はやる気持ちを抑えつつ、さっそく会場内へ。
歴史博物館に到着した時間は、少し遅かったのですが、
休日ということもあり、会場内はけっこう賑わっていました。

作品は、さまざまな作家さんのものを持ち寄るかたちで展示されていましたが、
大別して、プラモデル/ジオラマ系の方と、ドールハウス系の方、鉄道模型系の方の、
三種類に別れるようなかたちでした。

館内は、フラッシュは禁止ですが、撮影はOKとのことで、
思いっきり、各作品を撮影してきました。

ランドスケープクリエイション

こちらは、クルマのプラモデルを、
古びた使い込まれた状態に仕上げてジオラマ化することで、
ここ最近、広く知れるようになった、奥川さんの作品です。
この作品は、ジオラマのHow to本である
「ランドスケープクリエイション」という本の表紙にも使われていて、
奥川さんの代表作のひとつといっていいものだと思います。
今回、その作品を直に見ることができ、これだけでもう、カンゲキです。

それにしても、細部までキッチリ作られていて、
見れば見るほど、驚きと発見があります。
人物(フィギュア)は配されていないのですが、それでいて、
小物によって人の生活感を醸し出していて、ジオラマの楽しさが満載です。
こうした作品を見ていると、自分でも作りたいなと、
ひしひしと思ってしまいます。

漁船のジオラマ

こちらは、荒木さんという作家さんのジオラマですが、
すばらしいクオリティです。

この漁船は、たしかアオシマのキットだったと思うのですが、
漁船のライト(イカ釣り漁船なのでしょうか)のコードを、
しっかりと作り込んであって、ディティールの再現は抜かりないです。
しかも、建物やコンクリートの経年劣化表現もすばらしく、
港のうらさびれた雰囲気も漂っています。
昭和ミニチュア情景展、という今回のエキシビションには、まさに、
うってつけのジオラマだと思います。

朽ちた船

同じ荒木さんの作品ですが、こちらも、うらさびれた雰囲気満点で、
朽ちた漁船の姿には、哀愁さえ感じます。
なおかつ、猫などの小物にも充分神経が行き渡っていて、
朽ちた漁船のストーリーを、見る側に語りかけてくるようです。
そばにある、錆びついた軽トラックの廃車も、しっかり作り込まれています。

すごいディティール

こちらは、伊藤さんという作家さんのジオラマですが、
とにかく、細部へのこだわりがすごいです。
伊藤さんはミリタリージオラマでもすばらしい作品を作られていますが、
こうした、三丁目の夕日をモチーフに下、日常風景のジオラマでも、
その力のほどを、遺憾なく見せてくれています。

そのほかにも、TVチャンピオンで有名になった、
山田卓司さんや金子さんのジオラマも展示されていました。
(山田さんの作品は、浜松ジオラマファクトリーに展示されているものでした)

変わったジオラマ

こちらの作家さんは、私は存じ上げない方なのですが、
ジオラマにオブジェ的な要素を盛り込んだ、
独創的な作品を出品されていました。
すべての作品に、列車が入っているので、
鉄道模型を制作される方なのかもしれませんが、
とかく四角くなりがちなジオラマを、自由な発想で表現されていました。

会場風景

というわけで、おもいっきり、ジオラマ展を堪能してきました。
会場を後にするのが、名残惜しく、また忍びなかったです。

そのあとは、歴史博物館の常設展示も見て回りました。
常設展は、旧石器時代から現代までの安城市の歴史を、順を紹介するもので、
出土品やパネルなどで、わかりやすく解説しています。
ただ、こちらは、ジオラマ展ほど人気はないようで、私たち以外、
だれもおらず、場内はがらんとしていました。

というわけで、天候には恵まれなかった週末ですが、
ジオラマ展を、思う存分楽しんできました。
こうした催しは、これからも、開催してほしいものです。

なお、この昭和ミニチュア展は、8月31日まで開かれていますので、
お近くの方は、ぜひ、行ってみてください。




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