
三重県津市にある三重県立美術館で、7月15日から9月18日まで開かれていた、
企画展『テオ・ヤンセン展』に行ってきました。
このエキシビションは、
オランダのアーティストであるテオ・ヤンセン氏が、創造、製作した、
チューブの集合体による歩行体『ビースト』を、多数展示する企画展で、
期間中は、展示物のいくつかを実際に歩行させる、
実動デモンストレーションも行うといいます。
かねてから、ネットの動画などで、海辺をゆっくりと歩行する、
奇妙で魅惑的なビーストの動画に魅せられていた私は、
今回の企画展に「これは絶対に見に行かねば」と、期待に胸を膨らませていました。
ただ、情報によると、夏休みの期間中は、たいへんな人出となっており、
駐車場も満杯で別の場所に臨時駐車場を用意するなど、
かなり混雑しているとのことです。
というわけで、夏休みの期間が終わるまでじっと待ち、
先々週の平日に、満を持して、ヨメとともに津へといってきました。
とはいえ、決行日は平日ということで、
いっしょに行く予定のヨメも、片付けなければらない仕事があるなど、
出発は思いのほか遅れてしまいました。
津に向かったのは、結局、お昼近くになってからでした。
というわけで、ヨメのプジョーに乗って、国道23号線を伊勢方面へとひた走り、
途中昼食をとって、午後2時半頃に津に到着しました。

混雑を避けるために、あえて平日を選んで、ここまできたわけですが、
やっぱりというべきか、意外というべきか、三重県立美術館に着くと、
駐車場に入ろうとするクルマがすでに並んでいました。
平日なのにこんなに混んでいるのか、と思ったのですが、
思いのほか早く、駐車場に乗り入れることができました。
土日だったら、きっと、これほどスムーズには行かなかったと思います。

津には、プラモサミット見学のため、つい数ヶ月前にきましたが、
三重県美術館を訪れるのは、今回がはじめてです。
さすがに、立派な美術館です。

というわけで、早々にチケットを買って、館内へ。
広いエントランスには、見物客を出迎えるように、
巨大なビーストがドンと鎮座していて、もう興奮度はマックスです。
こうした複雑な構造物が足を使って歩行するなんて、信じられない思いです。

こちらが会場風景です。
見学客の数は、決して少なくはないのですが、混雑しているというわけでもなく、
やはり、平日を選んできてよかったと思いました。
しかも、美術展には珍しく、撮影はどこもOK。
というわけで、もう、写真を撮りまくりです。
テオ・ヤンセン氏は、当初、コンピュータを使って、
線虫のような架空の生物を創造し、それが組み合わされることで、
どのような進化を遂げていくのか、見極めようと考えたようです。
この架空の生物は、やがてコンピュータという枠を飛び出し、
プラスチックのチューブに置き換わって、現実世界に現れます。
そしてチューブは、複雑に組み合わされて、
やがては『ビースト』と呼ばれる、無生命生物へと進化していきました。
それは生物の進化の追体験であり、神である創造主の試行錯誤を、
自ら体験する試みでもありました。
プラスチックチューブは、進化をたどるビーストの最小単位であり、
いわば細胞といってもいいものです。
ヤンセンは、このチューブをいくつか組み合わせることで、
もっともシンプルで効率の良い、歩行システムを見つけます。
このシステムは、ビーストの基本的な移動方法として取り入れられ、
以後、さまざまなかたちに進化していくのです。

ビーストは、風を帆で受け止めて動力とし、
移動、歩行のシステムを獲得し、やがては、プロペラによって風を得たり、
また、帆で受けた風をペットボトルに蓄えて、それを動力とするなど、
さまざまなバリエーションを展開していきます。
ビーストの進化は枝分かれし、それぞれの進化の時期を、
ヤンセンは、グルトン、ホルダ、セレブラム、などと命名し、
さながら、古代生物の進化の体系のようにまとめました。

こちらは、歩行システムを説明する模型です。
実際にハンドルを回して、足を動かすことができます。
たしかに、単純な構造ですが、足を前に出して、踏み出すという、
一連の動作をしてみせます。
これがもっとも完成された、黄金比率的な構造といえるのかもしれません。

ビーストの形態はさまざまですが、
どれもチューブを組み合わせていることに変わりありません。
ですが、例外的に、装甲のような外皮をもつものもあるようです。
それがこのビーストです。
模型の展示しかありませんでしたが、館内では、
このビーストが歩行する映像が流れており、それがとても強烈な印象でした。
と、そうこうするうちに、館内アナウンスが流れ、ただいまから、
ビーストの可動実演が行われるとのこと。
さっそく見学させていただくことにしました。

こちらは、強風に耐えられる方法を獲得したビーストです。
地面 (砂浜) に杭を打って、身体を固定するといいます。
ビーストを動かすのは、このために日本までやってきた、専門の技師の方です。

またこちらは、求愛するビーストです。
いうまでもなくビーストには生殖機構はなく、かたちだけの求愛ですが、
この求愛の動作は、私たち人間を魅惑しているものだ、と、
アナウンスの方がおっしゃっていました。
鼻の動きが、なんとも生物的で、ユーモラスでした。
また、歩行システムを捨て去り、体を波状に動かすことで移動する、
キャタピラー型ビーストも、進化の過程で現れました。
そのキャタピラー型ビーストの可動実演も行われました。
これら専門の技師が可動させる実演と平行して、
ビーストを見学客が動かすこともできました。

というわけで、さっそく私も動かしてみました。
動かし方は、ビーストを押して進む、という感じで、
一定程度進んだら、今度は引いて戻します。
無数の足が整然と動く姿を、間近で見ることができました。
私が実演したあとは、ヨメも動かしてみました。

最後は、巨大なビーストの歩行デモンストレーションです。
このビーストは、帆で風を受け、それを無数のペットボトルに圧縮空気として溜め、
それを動力として、歩行します。
いわば、ペットボトルは筋肉であり、新しい動力源を得たビーストといっても、
いいのかもしれません。
見てるこちらに、ググッと歩いてきます。
会場からは、おおっ〜という歓声があがりました。
いままで、ネットの動画でビーストの歩行は何度か見てきましたが、
やっぱり、実物が歩くのを目にするのは、圧巻で、とても迫力がありました。
というわけで、テオヤンセン展をおもいっきり満喫してきました。
会場に入るさいに買ったチケットは、他の展示室への閲覧も許されており、
この機会に、三重県立美術館が所蔵している他の美術品や、
もうひとつの企画展を見学していくことにしました。
が、閉館は五時となっており、このときすでに四時過ぎ…。
ゆっくり見て回ることもできず、駆け足での見学となってしまいました。
三重県立美術館は、ルノアール、ダリ、ルドン、シャガールなど、
名のある画家の作品を多数所蔵しているようで、とても驚きました。
ですが、今回はそれらをゆっくり見て回ることができず、ちょっと残念でした。
次回、ここにくることがもしあったら、そのときは、
時間をかけて見て回りたいものです。
コチラをクリックしてくださるとうれしく思います。
FC2 Blog Ranking