ボナペティ表紙

今年は、7月末に入っても雨ばかりで、梅雨がなかなか開けません。
しかも、2018年の7月豪雨同様に、またしても、大雨が降り、我が岐阜県でも、
洪水警報がそこかしこで、しかも頻繁に発令されています。
いうまでもなく、身近な場所でも多くの被害があります。
とくに、国道41号線の寸断がされたことで、実家に帰ることも、不便な状況となっています。
岐阜県以外ではさらに深刻な被害もあるようで、いちはやい復旧を願うとともに、
被災された方には、衷心よりお見舞い申し上げます。

ところが、こうした雨の多い、湿度の高い時期にも関わらず、
新型コロナウイルスの蔓延は拡大する一方です。
6月から7月の時期は、感染症はさほど広がらないのでは、などと、私は考えていたのですが、
その楽観的な予想をあざ笑うかのように、感染された方が急激に増えています。
この調子でいったら、秋から冬にかけて、いったいどうなるのか、非常に心配です。

それにしても、今年は、はじまりからいままで、コロナ一色ですね。
きっと年末まで、コロナ危機が去ることはないでしょうし、おそらくは来年も、
そのまた次の年も、コロナの話題がなくなることはないでしょう。

そんな折、Go Toトラベルキャンペーンが始まり、国としては、経済活性化のため、
旅行や外出を奨励しているようですが、私としては、どうしても、
人がたくさん集まるような場所や観光名所は、避けたくなってしまいます。
というわけで、近頃は、お出かけしても、車から降りず、ただぐるぐるするだけ、
などということが多く、ブログに書くネタも、枯渇しています。

ですので、今回もまた、もはやちょっと食傷気味の感もなきにしもあらずですが、
ブックレビューをしてみたいと思います。
今回、取り上げるのは、文春文庫より出版された
『ボナペティ - 臆病なシェフと運命のボルシチ』という小説です。
著者は徳永圭さんという方です。

ボナペティ中面

物語の主人公は、都内の食品メーカーに勤める三十代のOL、長谷川佳恵。
準備に準備を重ねて挑むはずだったプレゼンを、
ライバル社員の姑息な妨害によって白紙に戻され、
憤懣やるかたない思いに駆られる。
そして、腹立ち紛れに、かつて行ったフレンチのお店に行くのだが……。
フレンチのシェフは変わっており、客を客とも思わぬ態度。
味は決して悪くはないのだが、そのシェフの物言いに、
もともと機嫌の良くなかった佳恵は、大激怒。
シェフと大げんかをしてしまう。

この経験を契機に、佳恵は、自らビストロを開店する計画を思いつくが、
今度は、優秀なシェフの獲得に難儀する。
そんな折、たまたま立ち寄ったショットバーで、驚くほどおいしいボルシチと出会う。
聞けば、そのボルシチは、マスターの手によるもではなく、
バイトとして店に入っている西田という若者が作ったものだという。
その西田とは、あの大げんかをしたフレンチのお店で働いていた若者だった。

さっそく佳恵は、西田の引き抜きにかかるが、西田は首を縦に振らない。
自分は責任ある地位に向かないのだという。
超イケメンである西田は、勤め先に女性がいると、その女性たちが互いに競い合い、
トラブルになるという。
西田はその事実を、自分に統率力がないからだと思い、自信喪失していたのだ。

佳恵は、そんな西田を必死に口説き落とし、同時に、かつての友達などの助けもあって、
なんとか、ビストロ『メゾンドシトロン』の開店に漕ぎ着けるが、
当初は快調だった売り上げがジリジリと下がり始め、
また、何者かによる、店への嫌がらせも始まる。

佳恵は、この苦難を克服できるのか……。

ボナペティ背表紙

といったストーリーです。
話のスジはいたってシンプルで、とてもわかりやすいです。
OLがお店を開き、さまざまな困難に直面しつつも、
仲間とともに、夢を実現する、という、感じです。
複雑な人間関係、対立軸、というものも、とりたててありません。

そのぶん、長谷川佳恵、西田健二、といったキャラクターがとてもうまく描かれていて、
思わず、笑ってしまったり、応援したくなったりします。
(物語は、佳恵、と、西田、のふたりの視点から描かれています)
なのに、ミステリー的な要素もあって、読者を飽きさせません。

複雑で先の見えないストーリー、どんでん返し、荒唐無稽な設定、といったものも、
読んでいて楽しいのですが、こうした、日常的なサクセスストーリーも、ほのぼのとして、
しかし、佳恵という押しの強いキャラクターのパワーもあって、
あっという間に読んでしまいます。

この作家さんを読むのは初めてですが、既作品がいくつかあるようですので、
機会があれば、また、ぜひ、読んでみたいです。



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トンネルからの眺め

前回、当ブログに、北陸、福井の朝倉氏遺跡についての記事をアップしましたが、
またしても、北陸ネタをいってみたいと思います。
今年は、コロナの影響であまり出かけることができないのですが、
そんな数少ないお出かけネタは、どうも北陸が多くなっています。
今回、取り上げるのは、明治期に建造された山岳鉄道トンネル『山中トンネル』です。
もっとも、行ってきたのはすでに二週間以上もまえの、6月28日になります。
(ズボラなので、なかなかアップできませんでした。すみません)
この日は、時折、雨が降るあいにくの空模様ではありましたが、
午後3時を過ぎるあたりから、しだいに晴れ間が覗くようになり、
総じて、まあまあの行楽日和となりました。

私が、この『山中トンネル』というトンネルを知ったのは、
TBSの『マツコの知らない世界』という番組でした。
番組には、古いトンネルマニアの方が出演していていて、
この山中トンネルを、日本屈指の名所トンネルとして、紹介していました。

北陸であれば日帰りドライブで行ける範囲ですし、
そんなトンネルがあるのならぜひ見てみたいと思っていたのですが、
前回、北陸にいったさいに、たまたまこの山中トンネルの看板を発見していたので、
近いうちに、ぜひ行ってみたいと思っていました。
今回、そんなこともあって、行ってみることにしました。

今回の出動車はヨメのプジョーです。
いつものように西の隣県滋賀県に入り北上、国道365号線に乗って、
余呉から福井県へと入り、そのまま道なりに進むと、
山中トンネルへ向かう看板が、頭上に見えてきます。

山道ドライブ

というわけで、看板に従って左折……。
やがて民家はなくなり、道はぐっと細くなりますが、そのまま西へと進みます。

駅の跡

そして最初に見えてくるのが、廃線の駅『大洞駅』跡です。
立て看板や蒸気機関車の車輪などが展示してありますので、
廃線マニアならずとも、すぐに発見できます。
ホームの跡もきちんと残っていますし、手入れもされているようです。
ほかにも、見学客の方達がきていました。

かつての駅

この駅は、デゴイチを二重連で使っていたとか……。
山岳地なので、そういうこともあるのでしょうが、そもそもなぜ、
山の中のこのような場所に、鉄道を通す必要があったのでしょうか。

というわけで、ふたたびプジョーに乗り、さらに西を目指しますが、
行く道のところどころに、廃線の遺構が残っています。
かつては賑わった路線のようですね。

こちらも明治期のもの

こちらは、土砂から線路を防護するためのロックシェッドだそうです。
通過した当初は、新しいものかと思っていましたが、
国の重要有形文化財の銘板が取り付けられており、
古いものだということがわかりました。
線路はもうないので、こうして車で通ることとなります。

トンネル到着

そしてついに、山中トンネルに到着。
深い山の中に、ぽっかりと、左右ふたつのトンネルが口を空けています。
曇天で、少し霧が出ているため、なんとも幻想的な、不思議な感じでした。
でも、トンネル見学には、この怪しげな雰囲気はとてもマッチしているかも……。

美しいレンガ

しかも、レンガを積んで作ってあり、それだけでもう、遺跡的な魅力があります。
褪せたレンガの色と、取り巻く緑が相俟って、なんとも幻想的な雰囲気です。

文化財銘板

しかも、このトンネルにも、先に通過したロックシェッド同様、
重要文化財であることを示す銘板が、左右両方に埋め込まれていました。
絡まる植物の蔓がまた、いい雰囲気になっています。
(なんとなく、ラピュタみたいですね)

で、トンネルのなかにも歩いて入ってみましたが、
灯りは乏しく、かなり暗い感じでした。
しかし、トンネルの壁面はレンガでびっしりと組まれており、
古いトンネルながらの、趣にあふれていました。
トンネル内部の写真や壁面の写真も撮ったんですが、
ピンボケになってしまいました。
トンネル内の模様をお見せできないのが、とても残念です。

しかも、出口はまったく見えません。
思いの外、長いトンネルのようで、進む先は闇です。
どのくらいの長さがあるのか、また、対向車が来たら、どうなるのか、
避ける場所があるか、そのあたりが、なんとも不安なところです。
歩いて出口まで行ってみようかと思いましたが、距離が不明なので、
途中で引き返してきました。
あのまま歩いていたら、別の世界に行っていたかも、などと思わせます。

トンネルの説明

蒸気機関車に引かれた列車は、ここでスイッチバックをして、
きつい勾配を上っていたそうです。
まさに交通の難所ですね。

隣のトンネル

こちらは、山中トンネルのすぐ隣にある、もうひとつのトンネルです。
どうやら、スイッチバックをするために、設けられたもののようです。
こちらもまた、独特の雰囲気がありますが、出口はなく、
内部で行き止まりになっているとのことでした。

というわけで、プジョーでトンネルを走ってみることも考えたのですが、
道幅が狭く、先がどうなっているかわからないこともあって、
運転手のヨメは、このまま先へ進むのを拒否。
というわけで、今回はこの山中トンネルで、引き返すことにしました。

天候回復

そのあと、東の今庄に戻り、今度は、越前海岸へと出てみることにしました。
途中、ひどい大雨に降られることもありましたが、進むうち、
しだいに天候は回復し、海に出るころには、すっきりとした青空に。
ここのところ、どうも空模様が安定しませんね。
でも、青空を見ると、気持ちも晴々、スッキリします。

帰りには、木の芽峠を探したのですが、こちらもまた、不発に終わってしまいました。
(木の芽トンネルは見つけたのですが、峠道にはどうやっていったらいいものか、
よくわかりませんでした。ちょっと残念)

というわけで、もし、また機会があれば、今度は、山中トンネル、
通過してみたいと思っています。



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