
4月24日の日曜はあいにくの雨となってしまいました。
こんな日は、ドライブに出かけても、気持ちが晴れません。
というわけで、どこかの屋内施設に行ってみようということになり、
かねてから見学してみたいと思っていた、
岐阜県美濃加茂市にある工作機械メーカー「マザック」の博物館に行ってみました。
岐阜県美濃加茂市は、ここ岐阜市の東にある人口10万ほどの都市です。
マザックの本社は愛知県大口町にあるとのことですが、美濃加茂市の郊外には、
巨大な工場があり、旋盤やマシニングセンタ、レーザー加工機といった、
工作機械を生産しています。
もともと工作機械にも興味がありましたし、なにせ美濃加茂は距離的にも近く、
こんな雨の日を楽しく過ごすためには、こうした企業博物館は、絶好の施設です。

というわけで、ヨメのプジョーで走ること一時間弱、
ヤマザキマザック工作機械博物館に到着しました。
もっとも、広大な敷地は駐車場ばかりで、建物が見当たりません。
あるのは、ガラス製のピラミッド型建造物と、商談用の建物くらいです。
ですが、このピラミッド型の建物の地下に、広大な施設が入っています。
なんだかちょっと、ルーブル美術館っぽい感じがしないこともないですが……。
入り口で検温や手の消毒を済ませたあと、受付で入場料を支払い、
エレベーターで地下3階に降ります。
JAFの会員証があれば、一人100円割引となりますので、会員証をお持ちの方は、
提示するとお得になります。
館内は基本的にどこでも撮影オーケーですが、地下2階のみ、不可とのことでした。
施設はまだ新しく、とても清潔な感じがしました。

エレベーターを降りると、順路に沿って、
工作機械について説明するパネルが展示してある部屋に、まず入ります。
そのあと、展示スペースへと移ります。

ここには、工作機械によって製造される製品のミニチュアが展示されていました。
なんと、ウクライナのICM製の1/24T型フォードが展示されていました。
現場にいた説明の担当者の方も、これ、ウクライナのプラモデルです、と、
おっしゃっていました。
ええ、もちろん、知ってますとも。

エントランスとも言えるこのミニチュアコーナーを抜けると、
工作機械の歴史を紹介するコーナーになります。
旋盤の原型となる工具の発明は、なんと、紀元前になります。
いくつかの木製のパーツを組み合わせ、それに紐をかけて引くことで、
回転力を与え、パーツを削るというものです。
もちろん、金属の加工などはできませんが、木の加工はこれでも可能なようですし、
原理としては、現在の旋盤と同じかと思います。
古代エジプトの壁画にも、こうした旋盤が描かれているとのことです。
人類の歴史とは、任意の形にモノを作るというところから、出発したともいえるようです。
以後、精密な金属加工が行えるようになると、工作機械も飛躍的な進歩を遂げ、
それがまた、さらに精密な金属加工を可能にするという状態になっていきます。
こうして、科学技術は、加速度的に進むことになるわけですね。

館内でまず人目をひくのが、この蒸気機関車D51です。
昭和15年製造と言いますから、アジア・太平洋戦争のはじまる一年前、
ヨーロッパではすでに第二次世界大戦が始まっていた時代になります。
蒸気機関車を間近で見る機会は久しぶりだったのですが、思いのほか巨大で、
驚きます。

説明をしてくださるスタッフの方とともに機関車の運転席に乗り込みます。
機関車と後続の客車のブレーキ、線路に砂を落とすレバー、など、ひととおり、
運転の方法を教わりました。
機関車の速度はおおよそ時速80キロ程度だったと言います。
もちろん、走行中は常に後方の石炭車から石炭を炉にくべなくてはならないので、
給炭係はかなりの重労働だったと思われます。
なんにしても、このレトロ感はたまらないですね。
すべてのパーツは、昭和15年当時のものだそうです。
金色に見えるパーツは真鍮製で、少し赤みがかって見えるパイプ類は銅製です。
この機関車は汽笛を鳴らすこともできました。
運転席のクラッチペダルのようなペダルを踏むと、汽笛がなります。

こちらは、バイト(金属を切除する硬質の金具)を、往復運動させることによって、
より高速の金属切除加工を可能としたフライス盤です。
ベルトが二種のプーリーの間を移動することで、逆回転を可能にしています。
写真ではモーターが後方についていますが、実際には、蒸気機関等の別の動力を、
ベルトを介して得て、作動するようになっています。
往復運動ができる機械は画期的発明だったそうです。

こちらは、足踏み式の旋盤です。ミシンにも似たレトロな形状です。
プーリーが段付きになっているのは、速度を変速させるための機構です。

こちらも、画面向かって左側にあるシルバーの段付きの円筒がプーリーです。
あっ、ところで、いまさらですが、
ヤマザキマザック工作機械博物館のサイトは、以下をご覧ください。
○ ヤマザキマザック工作機械博物館のサイトはコチラ。 ~

こちらは、昔の向上を再現したセットです。
複数の工作機械は、ひとつの動力源から、天井部分にあるプーリーとベルトを介して、
作動するようになっています。

こちらは、ギアを製造するための特殊な旋盤です。
だんだんと、複雑な機械になっていきますね。

精密工作機械は、昭和に入っても輸入に頼っていました。
日本は戦前、戦中にかけて、多くの航空機、またエンジンなどを作りましたが、
それらは、こうした輸入工作機械によって製造されていたのです。
とくに航空機のエンジンを作るための海外製工作機械は、とても大切にされたそうです。
しかし、そうした状態では、経済をされたら、軍需産業はただちに立ち行かなくなります。
日本は、脆弱な工業体制のままで、対米英戦争に突入したことになりますね。

工作機械を使って作られた製品の代表格として、自動車は展示されていました。
こちらは大ヒット商品であるT型フォードです。
けっこう大きいな、という印象です。
見たところ、前輪にブレーキはないようで、前照灯も、電気ではなく、
ガス灯方式だったそうです。
前照灯を点けるためのガス発生装置が助手席のあたりにあるのですが、
カーバイトのような、ガスを発生させる鉱石を使っていたのではないかとのことでした。
手前にデファレンシャルギアが展示されていますが、
この当時のT型フォードには、デフは搭載されていなかったのではないか、とのことでした。
(一見すると、デフがあるように見えるのですが、
デフを搭載するには、ギアボックスが小さすぎるとのことでした)
でも、デフがないと、カーブを回るのがかなりたいへんな気がするのですが。

また、飛行機も展示されていました。テキサンです。
たしか、映画トラ・トラ・トラで、零戦に仕立てられていた期待ですね。
キャノピーのあたりが、零戦に似ていなくもないのですが、零戦ほど、
美しくないような気もします。

こちらは時計用の旋盤などの工具です。
こういう工具なども見ているとおもしろいですね。

ちなみに、戦後になっても、工作機械は輸入が多かったようです。
とくに歯車を正確に研磨するような機械となると、海外製品の独擅場だったようです。
そんななか、日本製品も品質をどんどん上げ、ついには海外に輸出できるようなるまで、
成長しました。

こちらは最新の工作機械で作られた製品群です。
非常に複雑な形状を自動で製作できるまでになりました。
続いて順路に従って地下二階の展示室に上がります。
こちらは撮影禁止なので写真がありませんが、工場のラインを見ることができました。
また、工作機械を製造する過程のビデオ映像が上映されていました。

こうして、ヤマザキマザック博物館を堪能してきました。
スタッフの方に、とても詳細な説明をいただきましたので、思いのほか、
時間がかかりましたが、そのぶん、とても勉強になりましたし、楽しかったです。
そのあと、近くのお菓子工場直売店に行き、ワッフルなどを買って帰ってきました。
終日雨の日曜でしたが、とても有意義に過ごすことができました。
今後も、企業博物館にぜひ行ってみたいと思います。
コチラをクリックしてくださるとうれしく思います。
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