
年が明け早くも一ヶ月が過ぎようとしています。
光熱費の高騰や食料品の値上げ、連続同等の頻発など、
年始から明るい話がまったくありませんが、本ブログは、今年もマイペースで、
のんびり綴っていきたいと思っています。
というわけで、今回はここ最近多くなりつつある読書ネタをいきたいと思います。
取り上げるのは、創元推理文庫、ピーター・スワンソンの「そしてミランダを殺す」です。
昨年、スワンソンの「アリスが語らないことは」を取り上げてみましたが、
そしてミランダを殺す、は、そのアリスよりも前に書かれた作品です。
本作の出版は2018年だそうですが、スワンソンといえば、
この、そしてミランダを殺す、のほうが、アリス〜よりも有名ではないかと思います。
本作は、アリス~との共通点がとても多くあります。
まず物語の舞台として、アリスにも登場した『ケネウイック』がでてきます。
この街は、アメリカのニューイングランド地方にある小さな海沿いの街です。
(この街は架空で、実在はしないそうです)
アリス~では、このケネウイックの街の様子が、とても詳しく書かれていました。
ちょっとさみしげな雰囲気を持つ海辺の風景、空の色や海の光景、などが、
とてもリアルに、目に浮かぶように書かれています。
海沿いの遊歩道の描写は、とても印象的です。
また、現在と過去が交錯しつつ、物語が展開して行くところも、
アリス~とかなり似通っています。

さて、その物語ですが……。
ロンドン、ヒースロー空港のラウンジで、
テッド・セヴァーソンは、若い女性と知り合います。
若くして巨万の富を築いたテッドですが、このとき、心中は穏やかではありませんでした。
というのも、愛する妻ミランダの浮気を知ったからです。
デッドは、酔いも手伝ってか、たまたま知り合った女に、
妻が浮気していることを打ち明けます。
普段なら、他愛もない世間話で終わるところですが、
話を聞いた女は、テッドに深く同情し、浮気妻に復讐してはどうかと持ちかけます。
ふたりはともに同じ飛行機でアメリカへと帰りますが、
女は、テッドに、もしミランダに復讐するのであれば私は全面的に協力する、と、
宣言します。
もっとも、その復讐とは、妻を殺すことであり、完全な犯罪行為です。
が、女は、見知らぬテッドのために、危ない橋を渡るというのです。
女には、完全犯罪を行うだけの頭脳と度胸があるようです。
こうして彼女は、決心が固まったらまた会いましょう、とテッドに告げます。
結局、テッドは、リリーという名のその女と再会し、
妻ミランダを殺害する計画を立てていきます。
やがてテッドは、妻に復讐することよりも、リリーへと強く惹かれていきます。
ところが、予想もしなかった事態に、テッドは遭遇するのです……。

空港で知り合った女に、妻の浮気を打ち明け、そのあと、
妻殺害の犯罪計画まで練るなんて、ずいぶん乱暴で陳腐な展開、とも思えますが、
そのあたりは、深く傷つき、捨て鉢な気持ちでいるテッドの心情を描写することで、
自然な展開に見せています。
妻への憎しみが募るほど、テッドは、リリーの凜とした姿勢に、
気高さのようなものを感じ、さらに惹かれていくのです。
そういうテッドの心情はよくわかります。
リリーは、細身で知的で美しい女です。
が、どこか心が壊れています。
彼女がどうしてそうなってしまったのかは、リリーが一人称になって語る過去のシーンで、
しだいに明かされていきます。

こうして、物語は、テッド、リリー、ミランダ、
そしてキンボールという刑事の独白によって語られていきます。
物語の展開はゆっくりとしていますが、途中、思いもよらない展開があったりと
とても楽しめます。
男性読者であれば、リリーという魅惑的な女性について、あれこれと想像することでしょう。
こんな人に、ラウンジで声をかけられたとしたら……。
テッドでなくとも、もう完全にメロメロですよね。
こうした、謎めいた美女が登場するところが、スワンソン作品の大きな魅力だと思います。
○ そしてミランダを殺す。創元推理文庫の情報はコチラヘ ~
翻訳物の小説は、お値段がちょっと高めなのですが、
読んでみると、やっぱりおもしろいですね。
スワンソンは、ほんのつい最近、だからダスティンは死んだ、という新刊が、
創元推理文庫から発売されました。
こちらもまた、読んでみたいと思っています。
といっても、ケイトが恐れるすべて、を読むほうが先かな……。
そうそう、そういえば、劉慈欣の『三体O 球状閃電』も発売になっていますね。
こちらは、あの三体の前日譚らしいです。
『三体X 観想之空』も出ていますが、こちらは劉慈欣作ではないところが、
ちょっとひっかかって、いまだ読まずにいますが、『三体O』については
もう、ゲットしてしまいました。
(ハードカバーは高いので、以前もらった商品券を使って買いました)
物価高騰で使えるお金が目減りする中でも、
読みたい本はいっぱいあって、本当に困ってしまいますね。
せめて本だけは値上がりしませんように!。
コチラをクリックしてくださるとうれしく思います。
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