美濃加茂散歩

先週の日曜は、絶好の好天に恵まれました。
こんな気持ちのいい日を思う存分満喫したい、ということで、
美濃加茂市にある『日特スパークテック WKSパーク』という河川公園に出かけみました。
(この公園は、かに木曽川左岸公園とも呼ばれているそうです)
オープンしたのは、昨年2022年の4月だと言いますから、
整備されたばかりの公園といっていいかなと思います。
公園の駐車場にある看板には、NGKのロゴが入っていましたので、
日本特殊陶業が、管理、運営している公園だろうと思われます。

あたりには、遊具広場や遊歩道、サッカー場、グラウンドなどがあり、
休日ということもあって、多くの家族づれやカップル、
サッカー少年などで賑わっていました。
もちろん、無料で入園できます。
遊具もトイレも、まさにピカピカの新品といった状態でした。
それにしても、美濃加茂市には、マザックの機械博物館見学を始め、
過去に何度もきたことがあるのですが、こんな公園があるとは、まったく知りませんでした。

今回、この公園を知るきっかけになったのは、
岐阜トヨタが出版している『VieVie』という小冊子です。

このVieVieという小冊子、トヨタのPR誌という側面が強いのですが、
地元の隠れたドライブコースや、名所旧跡、が掲載されていて、
休日に車で出かける場合は、とても役に立ちます。
月刊で出版されているらしく、すでに80号を超えていると言います。
なにしろ、ドライブ用の冊子でもありますから、地図もついていますし、
オールカラーですからとても見やすいです。

そんなわけでさっそく現地へ。
我が家から、ここ美濃加茂の日特スパークテックWKSパークまでは、
車で1時間と少しでした。

現地到着

とにかくもう、これ以上はないというほどの好天。
空なんて、もう真っ青。
この写真を見る限り、さぞかしお散歩日和だろうと思われるでしょうが、
じつは、とても風が強くて……。
日差しはあっても、もう、とっても寒いです。
しかも、川沿いですから、遮蔽物もなく、風がビュンビュン吹きすさんでいました。

ですが、気を取り直して、ヨメとふたり、ロング散歩に出発します。

幕府軍布陣地

風の強さに閉口しつつも、天気がいいから眺めは最高です。
木曽川の水の色も青々としていて、日差しを受けてキラキラと輝いていました。
あたりには、この風と寒さにもめげず、子供達が遊具で遊んでいました。
さすが子供は風の子ですね……。

承久の乱における戦さ場

そして、承久の乱のさいに起きた『大井戸の戦い』にまつわる案内看板がありました。
看板のあるこちら側が、幕府側 (鎌倉方) の東山道軍が陣を敷いた場所になるようです。
幕府側は、武田信光と小笠原長清と記されています。
また、ここから南西側の前渡という場所では、東海道を西進した北条泰時、三浦義村が、
朝廷軍と対峙したと言います。
(ということは、坂口健太郎と山本耕史ですね)

鎌倉殿の13人では、この大井戸の戦いは大きく取り上げられませんでしたが、
承久の乱のさいに、この地で、幕府方、朝廷方、双方の群勢が激突したと思うと、
なんとも、感慨深い気がします。

川面を見る

地図から察するに、このあたりが、
武田信光と小笠原長清が布陣した場所になるのではないかと思うのですが……。
ただいま重機が入って工事中でしたので、
今後は、公園の一部として、美しく整備されるのかもしれません。

朝廷軍布陣地

で、中濃大橋を渡って対岸側に着くと、朝廷側が布陣したと思われる場所に着きます。
木曽川を防衛ラインとして布陣したという感じなんでしょうね。

ただ、承久の乱についての解説した看板などはなく、観光案内マップを手にしていないと、
そのまま通り過ぎてしまいそうです。

長い遊歩道

そして対岸の堤防の上に設けられた遊歩道を歩きます。
道幅が広く、とても歩きやすいです。
写真ではほとんど人がいないように見えてしまいますが、
実際には、散歩する人、ランニングする人などが、ちらほらといました。
風がもう少し弱かったら、もっと賑わっていたんじゃないかと思います。

謎の人だかり

しばらく歩くと、人だかりのある建物が、堤防のすぐ脇に見えてきました。
なんでしょうか……。
というわけで、そちらに足を向けてみます。

ヤドリギ

なにやら看板が……。
正面に見える一風変わった木に、鳥が止まっているようです。
みなさんは、その鳥を撮るために、ここに集まっているようでした。
みなさん、迷彩塗装が施された、巨大でいかつい望遠レンズを持っています。

皆と一緒にカメラを向けて

で、私もくだんの木にカメラを向けてみましたが、
鳥の姿は……。どうもうまく撮れませんでした。
まあ、望遠レンズ、ないですしね。

この場所は、太田宿中山道会館というそうで、
郷土資料館と、お土産などを販売する売店が併設されています。
というわけで、さっそく資料館に入ってみることにしました。
建物はとても新しいです。
こちらも、日特スパークテック WKSパークと同様、最近整備されたもののようですね。

資料館

こちらが資料館の内部です。昔の街並みが再現されています。
しかも、無料で見学が可能です。
資料館入口には、幕末、天狗党を率いて京に上ろうとした
水戸の武田耕雲斎ゆかりの品があると書かれていましたが、どこにあるのか、
よくわかりませんでした。

ここでの展示は、皇女和宮の行幸についての資料が多かったですね。
和宮ご一行の行列の長いこと長いこと……、
本人は泣く泣く江戸に行ったわけですが、お付きの者は大騒ぎだったのかも……。

さらに遊歩道を行く

そしてさらに遊歩道を進みます。
このコース、かなり長いです。全踏破に1時間40分とありました。
これで普段の運動不足を一気に解消できそうな気がします。

この鉄橋を渡って向こう岸へ

そしてふたたび橋を渡り、日特スパークテックWKSパークに戻ります。
途中、弘法堂に立ち寄りお参り、そして今度はかぐや姫の散歩道をいう小径を通ります。

竹林

竹林の中を貫く道です。なかなか風情がありますね。

夫婦の木

夫婦木という樹木がありましたので、カメラを向けてしまいました。

こうして、出発点の日特スパークテックWKSパークまで戻ってきました。
かなりのロングコースだとは思っていましたが、やっぱりちょっと疲れましたね。
なにより、冷たい風が吹き付けていましたから、けっこう厳しい行軍になりました。

ドライブも楽しいものですが、知らない場所を散歩するのも、
とても楽しかったです。
次回も、どこかに歩きに行って見たいものです。


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天国でまた会おう

コロナ禍、そしてウクライナ侵攻後による急激な燃料費等の高騰もあって、
ここのところ、あまり長距離のお出かけができていません。
本ブログは「お出かけブログ」という傾向がとても強かったのですが、
昨年あたりから、お出かけにまつわる記事がすっかり少なくなってしまって、
自分としても、忸怩たる思いがあります。
さほど遠くなくても、どこかに気晴らしに出かけたいものですね。

というわけで、今回もまた、ブックレビューを行ってみたいと思います。
今回は、ピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」を取り上げてみます。
ルメートルはその女アレックスに代表されるように、ミステリーを書く作家、
というイメージがありますが、この天国でまた会おう、は、ミステリーではなく、
第一次大戦の終戦間際から、終戦一年後までのあいだのフランスを舞台にした、
いわゆる「時代小説」になるのかな、と思います。
しかもこの文庫は、ハヤカワ書房から出版されています。

この「天国でまた会おう」は、続く、「炎の色」へとバトンタッチし、
「我らが痛みの鏡」で、完結となるそうで、
その意味では、三部作ということになるのでしょうか。
で、とりあえず今回は、天国でまた会おう(上下二巻)を、ご紹介したいと思います。

本編の主人公は、アルベール・マイヤールという若者と、
その戦友でずば抜けた画才を持つエドゥアール・ペリクールです。
また、アルベールの上官アンリ・ドルネー・プラデル中尉、エドゥアールの姉、マドレーヌ、
そしてエドゥアールの富裕な父、マルセル・ペリクールを軸に、
物語が展開する構造となっています。

天国で〜の中身

さて、そのお話は……。
物語は1918年秋から始まります。
この頃、第一次大戦はまもなく終わる、という噂が、
戦場のあちこちで囁かれるようになっていました。
そんな状況下では、兵士の士気は上がりません。
もうすぐ終戦なのに、ここで戦死しては元も子もないからです。
こちらのフランス軍も、向こうのドイツ軍も、そんな厭戦気分の中で、
たがいに動きを見せず、ひたすら時が過ぎるのを待っている感がありました。

ところが、敵陣を探るべく斥候に出たフランス兵を、ドイツ兵が射殺。
ここから猛烈な戦闘が始まります。
フランス軍将校のドルーネプラデル中尉は、味方の兵士たちに突撃を命じます。
兵士アルベール・マイヤールもこの突撃に加わりました。
が、マイヤールは、その最中、敵弾に斃れた味方斥候兵の遺体を発見します。
その遺体は背中を撃たれていました。
斥候兵を射殺したのは、ドイツ兵ではなく、味方のフランス兵だったのです。
プラデル中尉は、戦争が続いているうちに武勲をたてようと、
味方斥候兵を手にかけたのです。

この事実に気づいた途端、アルベールは、突進していたプラデル中尉に、
砲弾でできた穴に突き落とされます。この穴からは容易に出られません。
プラデルはその場をさり、その付近に榴弾砲が着弾。
大量の土砂が巻き上げられ、アルベールの落ちた穴は埋まってしまいます。
窒息寸前のアルベールを救ったのは、戦友のエドゥアールでした。
が、直後、さらに砲弾が着弾。エドゥアールは顔の下半分を失う大怪我を負います。

アルベールは、命の恩人であるエドゥアールを献身的に看病します。
が、エドゥアールは、二目と見られない顔になったせいか、家に帰ることを断固拒否します。
アルベールは一計を案じ、死亡したフランス兵と、友人エドゥアールの身分を交換、
エドゥアールを死んだものとし、戦死したラヴィエールの身分をエドゥアールに与えます。

ふたりは、戦後の混乱するフランス社会の中で、肩を寄せ合って生きていきますが、
生活は困窮、もう、どうにもならなくなってしまいます。

そんななか、顔を失ったエドゥアールは、
社会を震撼させある、一大詐欺計画を思いつくのですが……。

ハヤカワ文庫背表紙

物語は、このアルベールとエドゥアールを中心軸としつつ、
いけすかないペテン師プラデルの成功と破滅と、
息子に対して屈折した愛情を持つペリクールの物語、そして
プラデルの妻となったペリクールの娘、マドレーヌのストーリーとを、
交互に、重層的に語るかたちで進展していきます。
なので、ちょっと群像劇的な印象があるという感じでしょうか。

ストーリーは、ルメートルらしくとても面白く、また、
極端なビビリ屋のアルベール、エキセントリックなエドゥアール、のコンビが、
とてもユーモラスに描かれていて、読み手を飽きさせません。
このあたりは、ルメートルらしさが出ているかもしれません。

また、エドゥアールの顔の怪我がいかにひどいのか、その様子や、皮膚の色、
吐息の匂いまで描写してあり、こうしたどこか猟奇的な表現も、
ルメートルらしいのかな、と、ふと思ってしまいました。

余談ですが、顔を失った男が別人になりすます、というくだりを読んだ日本の読者のかたは、
おそらく、100パーセント、横溝正史の「犬神家の一族」を思い出すのではないでしょうか。
私も、読んでいて、思わず、「スケキヨかよ」とつぶやいてしまいました。

互いに深い愛情を抱きつつも、激しく憎み反発しあう、
マルセルとエドゥアールの父子関係についても、読ませどころかと思います。

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ただ、この小説は視点人物がよく変わる構造となっています。
マルセルが視点人物となるシーンなどでは、
ときに、娘のマドレーヌが視点人物なったりします。
それがこの場面の妙味となっているのですが、えてしてこうした多視点人物の小説は、
内容が散漫になってしまうようにも思います。

また、ストーリーにおいても、
アルベールが作品全体の主人公となって物語が進行していく体裁をとりながら、
最後のクライマックスに、そのアルベールが絡まないかたちとなっていて、
これもまた、物語の散漫感を出してしまっているのかな、と思います。

日本の小説の多くは、三人称一視点形式となっていて、
視点人物が変わる場合は、章やチャプターを変えて語る場合が多いのではないかと思います。
このほうがはるかに読みやすいと思うのですが、海外の翻訳小説は、
ひとつのシーンで他視点になってしまうことが、比較的多いように思います。
こういう方法はあまり褒められたものではないような気がするのですが……。

などといろいろ書きましたが、ハヤカワで翻訳出版されるだけあって、
作品としてはとても面白いと思いました。
次作の炎の色は、エドゥアールの姉、マドレーヌが主人公となるようです。
こちらもまた、さっそく読んでみたいと思っています。

あっ、そのまえに、どこかにお出かけに行きたいです!。


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