takom stug III (8)

昨年、誕生日プレゼントとして嫁さんに買ってもらったタコムのIII号突撃砲ですが、
なにかとバタバタしていて(といっても、仕事は相変わらず暇なのですが)、
しっかりと取り組むこともないまま、半年以上もの時間が経ってしまいました。
まさに亀の歩みのような状態になのですが、
それでも、じわじわと、作業は進んできましたので、
今回は、そんなIII突のことを、ちょっと取り上げて見たいと思います。

タコムのキットは初めてだったのですが、とても美しいモールドがなされていて、
ランナー状態で見たときは好感度も高かったのですが、いざ組み立ててみると、
車体に歪みがあったり、また、私の組み立て方がいけなかったかと思うのですが、
部分連結履帯が微妙に短かったりと、ストレートに組むだけで、
けっこう悪戦苦闘してしまいました。

プラモデルを組むのなんて久しぶりですから、きっとそれがいけなかったのかもしれません。
ただ、いざ組んでしまえば、とてもかっこいいIII号突撃砲ができあがります。
部品の点数も適度に抑えられていて、そのあたりも好感が持てるところかもしれません。
それでも欲をいうと、ハッチを開けたあたりの内装部品や砲尾の部品が入っていると、
もっとよかったかなと思います。
(まあ、そういうものについてはミニアートやライフィールドのキットに、
バッチリ入っているのでしょうが……)

takom stug III (6)

今回は、まずマホガニーサーフェイサーを全体に吹いてみました。
こちらは色付きサーフェイサーということで、下地処理と塗装が一発でできる、という、
優れものだそうです。
とはいえ、これは個人の感想なのですが、
塗膜面のなめらかさなどを考えると、サーフェイサーは、
通常のグレーのもののほうが、性能は高いように思います。
これは、あらゆる色付きのサーフェイサーでも、同じことがいえるような気がします。
(あくまで個人の感想ではありますが……)
次回からは、通常のサーフェイサーをエアブラシで吹いたあと、
通常のラッカー系のマホガニーを塗布したいと思っています。

また、全体をマホガニー色で塗りつぶし、その後、ダークイエローを塗るという方法も、
はたして最善の方法だろうかと思ってしまいました。
マホガニーのうえにダークイエローを乗せると、
どうしても発色に冴えがなくなると思います。
ただ、塗料の届きにくいところや、影となるところに、
暗色が残る、というのは、メリットでもあると思います。
そのあたりも考え、次回は、ブラック&ホワイト法のようなかたちで塗装できればと、
今回の反省として、いま、思っています。

takom stug III (6)

また、カラーモデュレーション的な、面による明暗表現も、今回、行ってみました。
この方法、AFV塗装法としていまや定着した感があるようですが、
やりすぎると、リアルとは違う方向に行きそうな塗装法であるとも思います。
そもそも、実際の戦車は面によって色が違っているなんてことはありません。
とはいえ、酷使された車両の塗装は退色などのダメージを負っていることが多く、
そういう面では、効果のある方法ではないかとも思えます。

ですので、ごく控えめに、 面の色の違いを表現しました。
塗装に使用したのは、タミヤのラッカーですが、
明るい部分のダークイエローを表現するのに、
フラットホワイトを混ぜて表現してしまいました。
どうもこれは、よい方法ではないようですね。
リアルイラストを描くときでもそうですが、ホワイトを混ぜると、
どうしても絵の具の再度は、落ちてしまいます。

明るい部分のダークイエロー表現は、タンのような色を混ぜるべきであったかもしれません。
また暗い部分の表現は、ダークイエローに、LP77ライトブラウンなどを加えて表現しました。
暗い方向に持って行くときは、若干、赤みのある色に寄せたほうが、
色目的に、美しいのではないかと思っています。

takom stug III (3)

また、いまはまだ塗り込みの途中ですが、ロードホイルのゴム表現などは、
これもまたタミヤラッカーのラバーブラックを筆塗りしています。
ラッカーの筆塗りは、エナメルほどきれいにはいかないような気もしますが、
のちのウエザリング作業のことを考えると、
基本塗装は、やっぱりすべてラッカーで済ませたいと思ってしまいます。

このIII突は、イタリア戦線の三食迷彩で仕上げたいなと思っています。
ダスヴェルクの1/16III突Gの塗装図に、三色迷彩されたモンテカッシノ戦のものがあります。
(これは、鹵獲された写真が残っているものかと思います)

ここ最近、ネットなどで、AI着色されたドイツ軍AFV写真を見かけるようになりましたが、
いままでダークイエロー単色だと思われていたものが、じつは三色迷彩されていた、
という事例も、いくつかみられるように思います。
AI着色が正しいともいえないのでしょうが、この新しい解釈法で、
自由に塗ってみるのも、また一興かなと思っています。
単色より三色迷彩のほうが見栄えがするような気がしますし、
かといって、ロシア戦線だと、なんとなく抵抗感がありますので、
このモンテカッシノのIII突にトライしてみたいと思っています。

takom stug III (4)

ちなみにこのIII突では、ネオジム磁石を使って、砲の着脱ができるようにしました。
磁石は百円均一で売っている最小のものを使って見たのですが、
それでも吸引力はかなり強力で、けっこうしっかりと固着してくれます。

takom stug III (5)

磁石を使ったこうした固着、固定方法というのは、なにもIII突に限らず、
いろいろな応用が利きそうなので、今後も、もし機会があれば、また、
使ってみたいな思っています。

もっとも、作業がものすごく遅い私のことですから、それがいつになるか、
ちょっとわからないんですが……。
いずれにしても、また、進捗があったら、当ブログでご紹介したいと思います。
それにしても、画像が全体にちょっと小さくて、わかりにくいですね。
すみません……。

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ケイトが恐れるすべて表紙

さて、今回は久しぶりにブックレビューをアップしてみたいと思います。
取り上げるのは、ピーター・スワンソンの「ケイトが恐れるすべて」です。
本ブログでピーター・スワンソンを取り上げるのは、
アリスが語らないことは、そしてミランダを殺す、に続き、3回目となります。
そういえば、最近、だからダスティンは死んだ、が刊行されましたね。
こちらも、また近いうちに読んでみたいと思っています。
(それにしても、東京創元社の翻訳ミステリって、
文庫でも、ちょっとお値段が高めのように思うんですが……)

というわけで、本作も物語の舞台は、ボストンになります。
スワンソンは、このボストンを含む、ニューイングランド地方を、
私が知る限り、必ず物語の舞台にしています。
今回も、ボストンのシーン描写は巧みになされています。
作者にとって、思い入れのある土地なのでしょう。

紙面01

さて、本作のストーリーですが、
主人公はケイト・プリディーというイギリス人の若い女性です。
ロンドンに住むケイトは、ボストンに住む又従兄弟のコービン・デルから、
期間限定で、互いの住まいを交換しないか、との誘いを受けます。
コービンはおよそ半年間、ロンドンに出張することとなり、
ロンドンでの住まいを探しています。
また、ケイトは、ボストンでグラフィックデザインの勉強をすることを望んでいます。
事情があって、自宅に引き篭りがちなケイトは、自らを変える意味でも、
イギリスを離れ、ボストンでの暮らしをするべきだとも望んでもいました。
こうして、互いの住まいを交換する話は成立し、
ケイトはボストンのベリーストリート101番地にあるコービンのアパートメントに入ります。
時を同じくして、コービンは、ロンドンにあるケイトのアパートメントに向かいました。

ケイトが住むことになったコービンのアパートメントは、とても豪華でした。
建物はU字型で、中央にはイタリア風の中庭があり、ドアマンも常にいます。
しかも、コービンの部屋は、そのなかで最も広く、部屋数も多い豪華なものでした。

が、部屋へと案内されたその時、
ケイトは、隣の部屋のドアを激しくノックする自分と同じ年頃の若い女性がに気づきます。
彼女は、隣の3C号室に住む、オードリー・マーシャルという女性の、友人だそうです。
オードリーと連絡が取れなくなり、心配になって、部屋を訪ねたのだといいます。

その事実に、ケイトは、突然大きな不安を感じます。
オードリーは室内でひとり死んでいるのではないか……。
常に最悪の想像を巡らすケイトは、勝手にそう確信してしまいます。
ところが、翌日になると、、ケイトのその予想は、図らずも的中してしまいます。
オードリー・マーシャルは遺体で発見されたのです。

しかも、ケイトが住むことになったコービンの部屋からは、
オードリーの部屋の合鍵が発見されます。
どうやらコービンは、オードリーの部屋に通っていたらしい。
しかも、合鍵まで持っているということは、恋人といってもいい関係だったと思われます。
ところが、ロンドンのコービンに問い合わせると、
彼は、オードリーと面識があるとはいうものの、
関係があったことを、なぜか頑として認めません。

さらに、オードリーの部屋の真向かいの棟の住む、アランという青年が、
オードリーの部屋をずっと覗き見していたことも判明します。

オードリーを殺したのは、又従兄弟のコービンなのか、
それとも覗き見をしていたアランなのか。

過去に交際相手がストーカーと化し、監禁された経験があるケイトは、
さらなる激しい不安に掻き立てられます。
そんなケイトのもとに、オードリーのかつての恋人だったという、
ジャック・ルドヴィコなる赤髪の男が現れます。
この男は、オードリーとコービンが恋人同士であり、
コービンはオードリーを殺した後、ロンドンに向かったということを強く示唆します。

であれば、やはりコービンが犯人なのか……。
やがて、コービンの過去がつまびらかになると、そこには衝撃の事実があるのですが……。

ケイトが恐れるすべて裏表紙

物語は、そしてミランダと同様、複数の人物の視点から描かれ、
その書き分けは各章ごとになされています。
翻訳物の小説では、視点人物が、ときに章をまたがず変わってしまうこともあり、
読み手を混乱させることがあるのですが、そういったことは、
スワンソンの作品ではありません。
ですので、安心(?)して読めるかと思います。

○ ケイトが恐れるすべて ピーター・スワンソン。創元推理文庫サイト ~

また、物語のなかでの経過時間は1週間程度と極めて短いものとなっています。
(過去の回想場面は15年前から始まりますが)
同じシーンが、視点者を変えて語られ、事の真相が読者にわかる構成になっています。
最終的には、この視点人物の中に、
犯人が加わり、犯行の詳細が判明するようになっています。

私は、スワンソン作品の魅力は、女性の登場人物の造形にあると思っているのですが、
今回の物語の主人公、ケイトも、その人となりに惹かれます。
常に最悪の想像をし、しかも心のうちから響いてくる声に悩まされているケイト、
この物語は、基本的に、殺人事件の謎を追うストーリーですが、
同時に、激しいトラウマを抱えるケイトが、新たな自分を取り戻し、
再出発をするストーリーにもなっています。

紙面02

また、亡くなったオードリーについても、覗きをするアラン側からの彼女の描写や、
本人がつけていた日記などから、とてもうまく描写されていると感じました。

コービンのアパートメントの描写もとても丹念で、
まるで映画を見ているように、しっかりと情景が浮かんできます。
的確にシーンが思い浮かぶかどうかで、その作家が好きになるかどうかが、
決まるように思います。

スワンソンを読んだのはこれで三作目なのですが、
私としては、これがいちばん好きかもしれません。
なんといっても、ラストが……。

スワンソンは2014年デビューの作家ですので、まだそれほど作品が多くないのですが、
今後も、新刊が出たら、読んでみたいと思っています。


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