
昨日(19日)、テレビを見ていて、
SF作家、アーサー・C・クラーク氏が亡くなったという報に接しました。
この訃報は、二十代の頃、翻訳物SFをよく読んでいた私にとって、
特別の感慨を抱かせるものでした。
私が最初に読んだクラーク作品はいったい何だったのか、
いまでは、まったく思い出せません。
ですが、「幼年期の終わり」「都市と星」「2001年宇宙の旅」といった、一連の作品は、
四十代半ばになった今でも、鮮烈な印象を持って記憶しています。
氏の作品は、綿密な科学知識によって裏付けされた物語ながらも、
フィロソフィーが存在し、氏独自の宗教観のようなものまで感じさせます。
「2001年宇宙の旅」に登場する「モノリス」や、
「幼年期の終わり」で語られる「オーバーマインド」は、
科学という視点から定義された「神」と、いえるように思います。
また、「都市と星」で描かれた「ヴァナモント」は、
どこかしら霊的な存在でもあります。
SF作家とはいえ、クラークは科学者であり、
常に、科学的考証に沿うストーリテリングを行ってきました。
そんな氏が描く「神的存在」や、その思想や世界観に、
私は、いたく興味をそそられてきました。
そういえば、かつて、著名な天文学者であったカール・セイガン氏が、
コンタクトというSF小説をものし、私もさっそく買って読んだのですが、
この作品においても「画家の署名」という章で、
神がかり的な意思の存在に触れています。
(この部分は、ロバート・ゼメキス監督の映画版では省かれています。
興味のある方は、ぜひ、原作小説を読んでください)
コンタクトは小説であり、フィクションですが、
劇中で描かれた世界観は、単なる物語ではなく、氏の持つ思想のあらわれであり、
最先端の科学研究にあたる人が、じつは、無神論者ではない、
という証でもあるように、私は思います。
科学をつきつめていけばいくほど、
「人間は何者か。どこから来てどこへ行くのか」という根源的な問いに、
向き合わざるを得なくなってくるのかもしれません。

と、なんだか、話が脱線しましたが、
とにかく、もはや、新たなクラーク作品を読むことはかなわなくなり、
(といっても、ここ最近、新作の発表はなかったですし、私も、
SFを読むことは、なくなってしまったのですが…)
なんとも、残念です。
氏のご冥福を遠い日本の地から、お祈りいたしております。
コチラをクリックしてくださるとうれしく思います。
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