ファントムピークス表紙

今年のGWに、信州の安曇野にある「烏川渓谷緑地」を訪れたと、
このブログにも書きましたが、先日、
その烏川渓谷緑地が舞台となっている小説を、
偶然、書店の店頭で見つけました。

タイトルはファントム・ピークス。

物語は、烏川渓谷緑地の奥にある「二の沢」で、
茸狩りに行った主婦が、行方不明になるところから始まります。

その主婦は、東京から安曇野に移住してきた三井周平の妻「杳子」で、
地元警察や消防団が必死の捜索をしても見つかることはなく、
結局、翌年の春になって、白骨遺体となって発見されます。

ですが、その発見場所は、行方不明になった二の沢ではなく、
方向が違う「本沢」だったのです。
人一倍、山を警戒していたはずの杳子が、
なぜ、ひとりで急峻な渓谷である本沢に行ったのか…。
杳子の夫である周平は、かねてから疑念を持ち続けています。

そんなある日、同じ本沢付近で、
キャンプにきていた女子大生が、不意に消息を絶ってしまいます。
同時に、幼い子供を連れた若い母親も行方がわからなくなります。

この山には、なにかがいるのか…。
謎を追う三井周平のもとに、やがて、「それ」が姿を現すのです。

ファントムピークス中面

私がこの小説を手に取るきっかけになったのは、
帯に「宮部みゆき氏絶賛」と、書かれていたからです。
このコピーは、本を手に取らせるのに、とても効果的かもしれませんね。

で、肝心の内容についてですが、
ミステリー(推理)小説を期待して読むと、期待はずれになります。
カレーを注文したつもりだったのに、
スパゲティーがでてきたような感じでしょうか。

ですが、内容としては、期待はずれではありません。
読み物として、じゅうぶん、楽しむことはできます。
ストーリー展開のテンポもよく、読者を飽きさせませんし、
強引な展開もありません。

作者が長野県出身者ということで、安曇野一帯の地理の描写は、
とてもきめ細かく、丹念に、リアルに書かれています。
この地域に対する作者の愛着を感じるほどです。

この小説は、松本清張賞の受賞候補作になったそうです。
ですが、最終的には、賞からは外れたのかもしれません。

審査結果は厳しいものだったといえるのでしょうが、
私も、本作は「賞」に手が届くまでには、至っていないように思います。
読み物としてはおもしろくとも、弱い部分が内包されていると思います。

ネタばれになるといけないので、具体的には書きませんが、
本筋の物語の横で進行する「謎解き」の部分は、いささか中途半端です。
この部分をうまく描くことができていたなら、本作はぐっと厚みを増したはずです。
ですが、なんだか、とってつけた感が否めません。
ラストも、いささか直線的で、あと、もうひとひねり欲しいと感じます。

息をもつかせぬ展開と繊細な情景描写、手慣れた文体で、
まるで映画を見ているかのように楽しめるのですが、
小説としての「重み」や「歯ごたえ」が、もうひとつ、足りないように思います。
ヒロインの人格描写も、冒頭と後半では、一貫性がないようにも思えます。

ただ、これだけのストーリーをまとめあげることができる人なので、
次回作、次々回作は、とても期待できるはずです。

作者は、その次回作を執筆中に、すでにガンのため他界したとのことですが、
おそらく、ご本人も無念の極みだったでしょうし、
読者である私も、とても残念でなりません。

烏川

さて、この本に触発されて…、
というか、高速道路無料化実験の終了で、信州へ行くための安房トンネルが、
今月下旬から有料化される、ということもあって、
先週の日曜、ふたたび、安曇野の烏川渓谷緑地に行ってみました。

今回は、GWにこの場を訪れたときより、ずっと奥に入ってみることにしました。

烏川渓谷緑地の道1

それにしても、かなりの山道。
急カーブに急坂が連続しています。
この道を、劇中登場する丹羽巡査が、ジムニーで駆け上がっていくのですが…。
鬱蒼とした深い森は、その奥に魔物が潜んでいそうな雰囲気を醸しています。
(とはいえ、時折、道は広くなります)

二の沢への道

まゆみ池の脇から、
三井杳子が消息を絶つ二の沢への道が伸びています。
もっと先まで歩いて行ってみたかったのですが、
行方不明になりそうなので、このあたりでやめておきました。

最深部の駐車場

そして、こちらは、道の終点です。
おそらくここは、志村夫妻がオデッセイに乗ってやってきた場所です。

ただ、この日は天候がいまひとつ。
晴れていれば、きっと、山の姿もひときわ美しく見えたと思います。
この山は、おそらく、常念岳か、蝶ヶ岳ではないかと思います。

延命水

こちらは、杳子が行方不明になる直前に水を汲んだと思われる「延命水」です。
切り立った斜面から幾筋も水が流れ落ちていて、独特の趣があります。
この場所は、道のすぐ脇にあるのですが、周囲は木々に囲まれていて、
暗い森のなかの秘密の場所、といった雰囲気があります。

というわけで、たまたま持ち合わせていた水筒に、この水を収めてきました。
延命できるかどうかは、不明ですが…。

烏川渓谷橋

物語のクライマックスは、この烏川渓谷橋で繰り広げられます。
ここで、最後の対決が行われます。
思わず、その場面を妄想してしまいます。

小説の現場を実際に確認してみる、というのも、また、
おもしろいですね。



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