ジョーカーゲーム

さて、ひさしぶりのbookネタです。
今回は、柳広司氏作の「ジョーカーゲーム」を取り上げてみたいと思います。
この小説は、帝国陸軍の極秘諜報組織を操る結城中佐と、
その下で働くスパイたちの暗闘を描いたものです。
時代は、太平洋戦争前夜。
異端の情報将校である結城中佐が、陸軍内の反対を押し切って、
諜報員養成のための組織である「D機関」を、立ち上げるところから始まります。

もっとも、私は、この小説を長編だと思い込んで読み始めたのですが、
実際には、短編集となっていました。
(このあたりは、想定していたものと、ちょっと違っていたわけですが…)

最初に収録されているのが、表題作でもある「ジョーカーゲーム」です。
本作は、スパイ容疑がかかる親日的アメリカ人から、
その容疑を示す決定的な物証を押収するまでの過程を描きくものですが、
同時に、D機関外部の人物である「佐久間」の目を通して、
結城中佐と人となりや、D機関設立のいきさつなども語られています。

場面を遡るストーリー展開が巧みで、しかも小気味よく、
また、D機関の特殊性、謎に満ちた結城中佐の過去、
そして、そこに集まる人間の常人離れした能力などの描写に、
読む側は、どんどん惹き込まれていきます。

しかも、伏線がうまく張られていて、
オチである物証発見のところで、
読み手は「なるほど」と、膝を打つ展開となります。
D機関員ではない参謀本部将校「佐久間」の心理変化が、
読み手の気持ちと重なり、読み手は、佐久間の目で、
D機関の異様さ、不可解さを感じつつ、
得体の知れない結城中佐という人物に、魅力を感じていくこととなります。

続いての収録作は「幽霊」
この二作目から、主人公はD機関の諜報員になります。
テロ容疑がかかるイギリス外交館の身辺を調査する、というストーリーですが、
こちらも、短い作品ながら、スパイ小説の醍醐味を味わえます。

日本発スパイ小説

次いで、ロビンソン、魔都、ダブルエックス、と、続きますが、後半の作品は、
いささか、ストーリーの強引さを感じることが多かったです。
(ちょっとツッコミどころが多いというか…)
ですので、冒頭二作が、この短編集の中では、
出色の出来と言えるかもしれません

スパイ小説というと、フレデリック・フォーサイスや、レン・デイトン、
ジョン・ル・カレなどといった海外の作家が有名ですが、
(とはいえ、私は、ル・カレは読んだことがないのですが)
日本初の本格スパイ小説、というのは、私が不勉強なだけかもしれませんが、
あまり聞いたことがないように思います。
(高村薫のリヴィエラを撃て、などがありますが…)

ただ、我が国にも、かつては、陸軍中野学校という諜報員養成機関があり、
日本発の、日本人を主人公に下スパイ小説というのも、
ネタには事欠かないのではないかと思います。
(事実、このジョーカーゲームのD機関は、あきらかに、
 陸軍中野学校をモデルとしています)

このジョーカーゲームにはダブルジョーカーという続編も出ているそうですが、
できれば、結城中佐が活躍する長編小説を読んでみたいところです。

さて、余談になりますが、本作の解説を、
鈴木宗男氏の事件のさい「外務省のラスプーチン」と呼ばれた、
元外務省職員「佐藤優」氏が書いています。

この人の解説が、本作に箔をつける一助になっているかもしれません。




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