
今回もまた美術館ネタになりますが、
先週末、石川県金沢市にある、金沢21世紀美術館で開かれている、
コレクション展『透過と反射』を見に行ってきました。
この企画展を知ったのは、先月、ヤノベケンジ氏のサイトを見ていたさいのことで、
開催期間のうちに、ぜひとも、行ってみたいと思っていたのです。
金沢の21世紀美術館は、現代アートの美術館であり、そのため、
一般的になじみのある、著名画家や作家の展示はあまりないかもしれないのですが、
こちらで開催される企画展は、いつも、好奇心をそそられるものばかりで、
また、作品の質も極めて高いものとなっています。
今回の企画展は、21世紀美術館が収蔵している作品のなかから、
透過と反射というテーマに沿うものを集め、展示するというものなので、
過去に見た作品や、常設のものも、一部含まれているようです。
ですが、すでに見た作品であっても、今回の企画展では、
あらたな視点で見ることができるかもしれません。
というわけで、祭日だった敬老の日に、金沢に向かって出発したのですが、
前週と同様、またしても、朝はバタバタしていて、出発が遅れてしまいました。
ここのところ、出発が遅れるのが常態化しており、いつかこの悪習を正さなければ、
と思っているのですが、いつもそのままになっています。

富山を経由して21世紀美術館に着いたのは午後2時半頃でした。
いつものように、下道を選んでのルートを通ることとなりました。
休日ということで、しかも、折しもこのときは連休ということで、
美術館はあいかわらずの混雑ぶりとなっており、
美術館併設の地下駐車場に入るにも、いくらか待たされてしまいました。
つまり、この美術館は、それほどまでに賑わっているということで、
いまや、兼六園や金沢城趾と並ぶほどの、
街のランドマークのひとつといっていいかもしれません。

こうしてようやく美術館に入り、チケット売り場へ。
館内では「透過と反射」展と対を成すように、「感性と定着」展も、
行われていましたが、ふたつの展示を満喫するには少し時間が足りないことと、
感性と定着展は10月半ばまで開催されているとのことで、
今回は「透過と反射」展に絞って見学することにしました。
○ 金沢市 / 金沢21世紀美術館
それにしても、金沢21世紀美術館の建物は、いつきても、モダンでカッコいいですネ。
アップルが美術館をはじめたら、こんな感じかもしれません。
(アップルだったら、もっと先鋭的になるのかもしれませんが)
さて「透過と反射」展の最初の作品は、
インド出身のアーティスト、アニッシュ・カプーアの作品でした。
この作品は、一作品のみを小部屋の中央に配置する、という展示方法がとられていて、
観客は、室内に入るだけで、外界とは隔絶された、特別な空間に入るような、
そんな感覚になると思います。
各展示会場は、当然のことながら撮影禁止なので、画像がなくて恐縮ですが、
作品は、四角い透明なアクリルの中に、空気の泡がかたまりになっている、
というかたちになっています。
その泡は、見ようによっては、くらげのようでもあり、星雲のようでもあり、
また、見る角度を変えるごとに、印象は大きく変わってきます。
泡の大きなかたまりのまわりには、無数の気泡があり、
それが、アクリルの中に固着して静止しているさまをじっと見ていると、
時間が静止しているような、そんな不思議な気持にもなってきます。
この透明な物質の中に存在しているものは、宇宙のかたちそのものではないか、
とも思えてきます。
○ 21世紀美術館 / コレクション展 I 透過と反射
次の作品は、同じカプーアの作品で、常設となっている「カプーアの部屋」です。
コンクリートの壁面を穿つように、黒い楕円が描かれているものですが、
(実際には黒ではなく、藍色とのことですが…)
この楕円を見ていると、世界の果てを覗いているような、
そんな気分になってきます。
次の部屋では、日本人作家も交えての集合展示となっていました。
とくに、ガラスを使った作品が印象に残りました。
ちょうどいま、NHKの「100分で名著」という番組で、
般若心経をとりあげていますが、そのなかで、
世界はうつろいゆくものであり、実体はないのだ、と説いていました。
透過と反射という言葉は、そのうつろいゆくものと、なにかしら、
重なるものがあるように思います。
反射して見える世界も、透けて見えるその先にある世界も、視点を変えれば、
とめどなくその様相を変えていきます。
これらの作品は、うつろっていく世界のありようから、
なにかをつかみとって、それをかたちとして定着させようとした、
そんな試みの結晶なのかもしれません。
こうして、各部屋の作品を鑑賞して回り、今回の目的のひとつだった、
ヤノベケンジ氏の作品まで至りました。
作品は、いびつな球体型のタンクのような、ロボットのような、そんなオブジェです。
一見すると、透過と反射というテーマに合ってないようにも思いますが、
タンクの中央にはガラスを嵌め込んだ円い窓があり、
そこには、水が満たされていることで、テーマとの合致に気がつきました。
解説書によると、この作品は、作者の外界から自らを守る心の防護壁であり、
また、胎内でもあるとのことでした。
タンク内の水は、羊水を模した塩水であるとのことです。
いわば、内的な精神の殻を具象化したということなのでしょうが、なによりも、
その形状がユーモラスで魅力的です。
最後は、オラファー・エリアソンという作家の、巨大なオブジェです。
ステンレスで作られた六角推を無数に集め、宇宙船のような物体に仕上げています。
その内部には入れるようになっていて、一歩足を踏み入れると、
鏡面仕上げされたステンレスによって、まるで万華鏡の内部に迷い込んだような、
そんな気持ちになります。
また、上下左右の感覚が遠くなり、浮遊感も感じます。
現代アートは難しく敷居が高い、と思っておられる方もいらっしゃるでしょうが、
こうした作品は、一種のアトラクション性のようなものがあり、
美術に興味のない方でも、充分楽しんでいただけるものではないかと思います。
このオブジェが最後の作品かと思っていたら、
なんと、トリは、常設展示物である「レアンドロの泉」になっていました。

この造形作品は、プールの底の床面にガラスを張り、
そのしたに部屋を作ったものですが、こちらも、アトラクション性が高く、
しかも、考えてみれば、今回のテーマに合致するものだと思います。
ここは撮影が許されているので、いろいろと写真を撮ってきました。

ちなみにこちらは、レアンドロの泉をうえから撮影したものです。
うえとしたとで、皆が手を振り合ったりしていました。
プールの実際の水深は、ほんの数センチくらいだと思います。
その後も、シルクスクリーンを使った作品を展示した「金光男」展、
見立ての実験室展を見て回りました。

こちらは、金光男展に展示されていた作品のひとつです。
この会場内は作品の撮影が許されており、こうして、写真に収めることができました。
作品は床に置いてあり、無造作に転がっているように見える電球も、コードも、
すべてが作品となっています。
作品は、パラフィンのうえにシルクスクリーンで印刷されている状態となっており、
それを電球が溶かすことで、あらたな造形を生み出すということらしいです。

円形の美術館の周囲は公園になっていて、そこには、多くの人が散策していました。
この公園は、金沢市民や観光客の憩いの場になっているようです。
こうして、二週に渡って美術館を巡ってきましたが、
とても有意義で、また、さまざまな意味で刺激を受けることができました。
こうした経験の蓄積が、お仕事の面で、生かすことができれば、と、
思っています。
コチラをクリックしてくださるとうれしく思います。
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