
今年は異様に梅雨明け宣言が早かったのですが、
どういうわけか、ここのところずっと雨で、なんだかまた梅雨に入ったような感じです。
しかも、この時期、またしても、コロナが蔓延し始ているようで、
ワクチンを三回摂取した身でありながらも、なんだか心配になってしまいます。
ちなみに、このワクチンについてですが、私は、前二回はファイザーを、
最後の一回をモデルナにしたのですが、
(なにしろ、モデルナを選択するととても早く接種が受けられるので)
そうしたら、もう、身体がだるいし寒気はするしで、たいへんでした。
ファイザーの時はなんの副反応もなかったんですけど。
ですので、この先おそらく、四回目の接種という話も出てくるのではないかと思いますが、
また副反応が出たらどうしよう、と怖気をふるっています。
それにしても、コロナって、なかなか収束しませんね。
この調子だと、完全にもとの生活に戻れるのは、2025年くらいかな、などと、
勝手に想定したりします。

さて、今回は、ふたたび本のレビューをいってみたいと思います。
今回取り上げるのは、ピエール・ルメートルの「監禁面接」です。
じつは、この作品を読了したのは、すでに二ヶ月くらい前のことなのですが、
非常に面白かったので、今回、レビューとして、取り上げることとなりました。
ピエール・ルメートルの作品を読むのは、今回で6冊目です。
いままで、悲しみのイレーヌ、その女アレックス、傷だらけのカミーユ、
の、ヴェルーヴェン警部三部作と、
我が母なるロージー(これもヴェルーヴェン警部がでてきますが、番外編的な感じです)
そして、死のドレスに花婿に、と、読み進めてきました。
このなかで、いちばん出来がよかったのは、やはりその女アレックスでしょうか。
しかし、今回の監禁面接も、その女~に匹敵するほどの、おもしろさでした。
(今回もまた、キャラクターの妙味が効いています)
物語は、一人称形式で語られます。
そのまえ、そのとき、そのあと、という三部構成になっていて、
そのまえ、の語り部が、俺ことアラン・デランブルです。
そのとき、の語り部は、ダヴィッド・フォンタナという男の目を通して書かれています。
そして最後の、そのあと、は、ふたたびアラン・デランブルが語り部を務めます。

その物語ですが……。
主人公は57歳のアラン・デランブルという男です。
失業して四年目となり、
現在、医薬品の発送を行うサージュリーという会社で働いていますが、
トルコ人上司のペリヴァンとトラブルになり、カッとなって暴力を振るってしまいます。
アランは、サージュリーを追われ、さらには訴えられることになってしまいます。
ところが、57歳のアランには再就職先などありません。
訴えられても、払える金もありません。
そんな折、著名な人事コンサルティング会社BLCから、アランのもとに手紙が届きます。
じつは、アランは、BLCが募集したトップ企業の人事副部長募集に、応募していたのです。
しかし、いったいどんな企業が、BLCのクライアントなのかわからないため、
トップ企業の人事副部長というのも、どこの会社なのかはわかりません。
ただ、試験にパスすれば、このトップ企業に高待遇で再就職できるのです。
アランは筆記試験に挑み、この試験に人生を賭けようとします。
が、BLCは、恐ろしい構想を持っていました。
クライアント企業は、サルクヴィルという場所にある大型工場の閉鎖と、
それにともなう大量馘首を計画していました。
その難しい仕事を任せるため、社内の誰に選んだらいいか、BLCに相談していたのです。
BLCのラコステ社長は、候補となる重役を一箇所に集め、そこに偽のテロリストを送り込んで、
全員を拘束し、この特殊なストレス下のもと、それぞれの重役の資質を図ろうという、
仰天アイデアをクライアント企業に提案します。
その資質を図るための要員を選抜し、すぐれた功績を残した者を、クライアント企業は、
人事副部長として雇う、というのです。
そんなことなどつゆ知らないアランは、並み居るライバルを抑え、面接試験へと進みます。
その会場で、アランは、BLCがテロリストを使った重役監禁テストと、
テストの進行役から、人事副部長が選出されることを知らされます。
アランは、とんでもないテストだと思いつつも、愛する妻の娘のため、
この、テロリストを使った監禁面接の進行役に、挑むのですが……。

とにかく、奇想天外なストーリーなのですが、なによりも読者を引き込ませるのは、
アランのキャラクターです。
アランはどこかユーモラスで、憎めません。
妻ニコルをとても愛していることも、読者の共感を大いに呼ぶところです。
このアランの行動に、読む側は、ハラハラさせられます。
アラン!、なにをやらかすんだ、と、思ってしまいます。

また、ニコルや、二人の娘のキャラクターの書き分けも秀逸です。
マチルドとリュシーのふたりの娘の性格の違いなども、うまく描かれているなと感心します。
その女アレックスよりもボリュームがありますが、あっという間に読んでしまえます。
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それにしても、海外翻訳の秀逸なミステリーを読むと、
ほんとうに、打ちのめされる思いがします。
ピエール・ルメートルは、デビューが遅かった作家ですので、
それほど作品数が多いわけではありません。
ミステリーは、残すところ、僕が死んだあの森、しかありません。
ですが、そのほかに、第一次大戦から第二次大戦に至るまでの期間を描いた、
時代小説がありますので、今後は、そちらを読み進めてみたいと思います。

ルメートルのことなので、きっと一筋縄ではないかない物語なのでは、と思いますが、
読了したら、いずれまた、このブログで、ご紹介したいと思います。
コチラをクリックしてくださるとうれしく思います。
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